11.自分だけの ページ13
「そういえば誕生日どこ行きたい?」
夕飯も食べ終わってくつろぎタイムに突入した頃、訊かれた。
「覚えとったんか」
「人の誕生日忘れるような人間に見える?」
「……さあ」
だっていつも何考えてるかわからないし。だけど、いつも何かを見透かされているようだ。
「私といてもつまらんだけやで」
「鈴森さんの誕生日なんだから、俺は別に楽しむ側じゃないし」
なんだか角名君にはド正論をぶつけられることが多い気がする。詳しくは、核心をついてくる、だけど。
「……っていうか、そんな『鈴森さん』なんて呼ばんでええのに。そんなさん付けされるような人間でもあらへんし」
「じゃあ」
私を何と呼ぼうか考えているらしい角名君を横目に、さっき出してくれたココアを一口啜ろうとする。
「……A?」
「ブッ!?」
危うく飲みかけていたココアを逆戻りさせてしまうところだった。
というかめっちゃ下品な音出しちゃったじゃん、責任取れよ。
「いや、あの……『鈴森』とかじゃ無いん?」
「俺に名前で呼ばれたくないの?」
「そういうわけやないけど」
いきなり名前呼びとはハードル高いことしてんくなぁ、と思っただけ。
「男子に名前で呼ばれたん久々だからびっくりしたわ」
男子に名前で呼ばれたのはいつぶりだろうか。“あの時”も呼ばれなかったから、四年ぶりか。
「……名前って、なんで特別なんやろ」
たとえば、今までよそよそしかった人や好きな人が自分の名前を呼んでくれたりとかしてくれたら、誰だって嬉しいじゃん?
それって、なんでなんだろう。
なんで自分の名前はこんなにも特別なんだろう。
中学の文法の授業で、人の名前は “固有名詞” っていって、世界に一つだけ、自分だけのものだって聞いた。
……自分だけのものなのに、他の人に呼ばれて嬉しいなんて、なんで思うんだろう。
「なあ角名君」
頬杖をついて角名君を見る。
「人って、なんで名前を呼んで呼ばれるんやと思う?」
いつも全てを見透かしたように此方を見てくるその目。
何も言ったことなんてない。同じクラスになるまで話したことも、会ったこともない。
なのに最初から私のことなんて全てわかっているかのように振る舞ってきた君は、
─────── 『A』
少しだけ、……ほんの少し、あの人に似ている。
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昆布の神(プロフ) - ルナさん» 修正致しました。ご指摘ありがとうございました。 (2021年11月17日 15時) (レス) id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
ルナ - あの、37話の星裁のお母さんが「まあ、神社みたいな感じかな」と言っている場面があるんですけど、”感じ„が“漢字„になっていましたよ! (2021年11月17日 0時) (レス) @page39 id: d2a92b36ce (このIDを非表示/違反報告)
昆布の神(プロフ) - 虹四葉さん» コメありですー! 角名君いいよね……最高すぎる……。 (2021年3月31日 21時) (レス) id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
虹四葉(プロフ) - もう神作よ…角名くんの言動が何もかも尊く見えるんだが…… (2021年3月31日 21時) (レス) id: 550a2fdb83 (このIDを非表示/違反報告)
昆布の神(プロフ) - 星猫さん» コメありです! 合作!? 是非ともお受けしたいです! お誘いありがとうございます! (2021年3月21日 20時) (レス) id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:昆布の神 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時:2021年3月8日 23時