あの日、見た星に願いを。【オリジナル】 (ページ7)

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Ⅴ ページ7

「……A」

何処からか、声が聞こえる。
懐かしい声。
……そういえば、人は、声から忘れるって聞いたことある、かも……。

「A！」

肩を揺さぶられて目を開け、体を起こす。
……ここ、何処？
学校？だけど、高校じゃ、ない……。

「やっと起きた。お前寝すぎ」

ボーッと窓の少し薄暗い空を見ていたら再び声をかけられる。
その声の主は、

「こう、き……」

誰よりも会いたかった。
誰よりも話したかった。

その彼が、今ここにいる。

少し幼い顔。

光輝だ。光輝なんだ。

「こ、ごゔぎ～……」

「うわ、なにお前」

次から次へと大粒の雨が瞳から降ってきて止まらない。
なのに、こっちの気も知らず、いきなり泣き出した私を見て半ば引いた目をする光輝……

「いや、酷いな貴様！！」

「いきなり泣かれたら誰だってこういう反応するわ！このゴリラ！！」

「はあ！？いつも先生に頼まれた本の集団を図書室に運んでいるだけでゴリラって何なわけ！？
すっっごい失礼！だからモテないわけ！！
この童顔！チビ！！」

「お前も対して俺と身長変わんねーだろ！！」

「女子に追いつかれるとかダサすぎ！！
それと私の名前は『お前』じゃなくて『A』！」

はあ、はあ、

存分に言い争ってお互い、息切れが激しい。
……そうだ、いつもこうやって強気になって、
結局素直になれなくて……

最期まで、伝えられなかったんだ。

ふとカレンダーを見ると十二月になっていた。
確か光輝が死んだのも十二月。
あと一週間と三日ほど。
ここにいれるのは、光輝が死ぬまで？
それとも今だけ……？

「じゃあ俺帰るわ」

光輝がスクールバッグを掴む。

「いや、ちょっ置いてかないでよ！」

まるで中学時代に戻ったようなやりとり。
いや実際、戻っているのだけれど。

私も机の横のスクールバッグをとって光輝の背中を追いかけた。