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目が覚めると、星一つ無い朝の空が視界に映った。
下山して家に帰ると、何故か母は何事も無かったかのように私を迎えて。
まるで私が朝イチで散歩に行っただけのような対応だった。
あとで、この体験を調べてみたところ、どうやらこの現象は、誰かが望まなくとも必ず千年に一度、起こりうるらしい。
その度、必ず十二月の今日には死者が一人出る……。
今年の犠牲が光輝だった。ということだろうか。
星が、残酷な運命へと導いている。
千年に一度、必ず起こる星の悲劇。
だけどこれは、次の地球の物語へと繋いでいくための儀式とも言われているらしい。
なんとも醜い───────……
そう思う人が殆どだと思う。
だが、本当にそうだろうか?
犠牲になった人々が皆、この運命を憎いと思いながら死んでいったのだろうか?
その人の人生の価値観も知らないくせに、勝手に自分達の価値観を押し付けるのは、それこそ、その人の人生すべてを否定してしまうことになる。
少なくとも、光輝はきっとこの運命を憎んでなどいない。
何故なら、彼は、星の降る夜に幸せそうに笑っていたのだから───────。
「……次は、私の番だね」
ゆっくり目を閉じる。
私が次へと繋ぐ主人公になる。
光輝から託された主人公枠を、私がこの人生をかけて達成しなければならない。これは責務なのだ。
『Aには、俺よりAを幸せに出来る良いヤツがいるからさ……』
そう言った光輝。
この主人公という役割において、“幸せ”に生きるという役目をこなさなければならない。
誰に決められたわけでもなく、自分で決めた、自分の価値観で。
自分が満足いく、自分が選択した人生を全うしなければ、それは“幸せ”とは言わない。
だって、これは私の物語なのだから。
誰かに決められた人生など歩まない。
自分の人生も、価値観も、全部全部自分で決める。
だから───────
私は目を開けて、携帯を手に取った。
LINEアプリを開き、『田中』の名前を見つけるとトーク画面を開いて受話器のマークをタップする。
三回ほどコールが鳴ると、「もしもし」と田中の声が聞こえた。
「あ、もしもし?久しぶり」
田中とは高校が違うから、この現実世界では『久しぶり』が適任だ。
「……言いたいことがあるんだけど」
そう言うと田中は少し息を吐いて、
「俺も」
と言った。
私の幸せに必要なのは、貴方だと気付かせてくれた。
ありがとう。私の
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花恋(プロフ) - 泣きました!本当に感動しました。!本当に作者様すごいです! (2020年10月26日 19時) (レス) id: beb1340a63 (このIDを非表示/違反報告)
りんご昆布の神(プロフ) - 鸞鳥さん» そう言って頂けて嬉しいです!更新頑張ります! (2020年10月9日 16時) (レス) id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
りんご昆布の神(プロフ) - 爽@三人娘。さん» ありがとうございます!ご期待に添えるように頑張ります! (2020年10月9日 16時) (レス) id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
りんご昆布の神(プロフ) - 花蝶霞☆奏音さん» いつも、ありがとうございます!皆さんに面白いと思って貰えるような小説を心がけていきます! (2020年10月9日 16時) (レス) id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
りんご昆布の神(プロフ) - りなりんさん» この作品に似合うcssだったので即お借りさせて頂きました笑 (2020年10月9日 16時) (レス) id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りんご昆布の神 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時:2020年10月6日 15時