あの日、見た星に願いを。【オリジナル】 (ページ14)

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XII ページ14

「はぁ～」

でっかいため息をつきながら通学路の道を重い足取りで、てくてく歩く。

結局あのあと連絡帳もノートも、一切見なかった。
見られないじゃん。見られるわけないじゃん。あんなの……。
私は持って行ってやったのに光輝は持ってきてくれないんだ……。
しかも、なんで田中なのよ……。

(あと五日……)

光輝が死ぬまで、あと六日。
そう。なんと私は風邪で三日も学校を休んでしまったのだ。
光輝の圧倒的風邪の強さ。

あと一週間を切ってしまった。
だけど、ここまで露骨に光輝自ら私に近づいてきてくれないと、

「言いにくいよ……」

「何が？」

「ゔっ！」

頭にほんの少しの痛みが突き刺さる。
また来やがったな、

「田中てめぇ……」

「俺の名前、『田中てめぇ』じゃねえんだけど」

「どっちだっていいわ。だいたい病み上がりの女の子を殴るか！？」

「へえ。秋月って女だったんだ」

「ああん？」

マジでコイツ、何なの。

『ノート持って行ってやったんだから俺様に感謝しろ』って感じ？

誰がしてやるか。

「田中。アンタ今日から五日間、私に話しかけるの禁止！！！」

「え、なんで？」

「なんでも！！」

プイッと踵を返して私は学校までの道を猛ダッシュした。
田中と話してたら本来の目的を忘れてしまう。
私は、死ぬ前に光輝と話がしたい。
田中に構ってなんていられない。

私は校門を抜けるの足を止めて、教室がある三階を見上げた。

冬だから口から出る息が白い。
私はマフラーに顔を埋めてギュッと握った。

「はよ」

不意にポン、と頭に手を置かれる。
恐る恐る前を見ると光輝が既に背を向けて下駄箱に行こうとしていた。

「あ、お、おはよう！」

精一杯の声を出すと、光輝がヒラヒラと素っ気ないけれど手を振ってくれる。

「……」

冷えた手で頭にそっと触れてみると、まだ光輝の手の温もりが残っていた。

「あったかい……」

私の顔は自然に笑みがほころんでいた。
光輝が何処か険しい顔をしていたのも知らずに。