つめたくてあつい。3 ページ5
「胡蝶」
実弥の少しばかり低い声にしのぶはハッとする。
「ごめんなさい、A……」
「大丈夫だよ、しのぶ」
Aは首を横に振って、眉を下げているしのぶに穏やかに笑ってみせた。
でも、それは表向きのこと。
実際、Aの心の中は悲しみの水で満たされていた。
……いないのだ。自分の愛する人だけが。この中に。
鬼のいない平和な世界。
鬼殺隊だった皆、ここにはいないが当然カナエも生きている。
前世と何ら変わりのない関係で。
なのにいない。
前世、花柱・桜宮Aが愛したあの人だけが、
霞柱・時透無一郎だけが───────。
彼だけが自分たちとは違う世界にいる。
巡り会うことが一切として出来ていない。
まさか、今世、この時代に彼が生まれ落ちていないとでも言うのだろうか？
だとしたら神は理不尽だ。
Aの幸せは、無一郎だけだというのに。
「わっしょい！そういえば明日から夏休みだが教師も数週間休みがあるだろう？皆は何か予定はあるのか！」
重くなった空気を変えるように前世の炎柱・煉獄杏寿郎が歯切れのいい声を響かせた。
「スイカ食う」
「おはぎ食う」
見事に声をハモらせた不死川兄弟にAはふっと笑った。
「仲がよろしいようで何より！」
「当たり前だァ。だがスイカよりおはぎが優先だなァ」
「いや兄ちゃん、そこだけは譲れない。スイカだ」
「俺は……俺は……。……友達と」
「冨岡さんは友達いないから、ぼっちの夏休みですね」
「…………」
そんなやりとりの横で、善逸は「うーん。今年の夏休みに禰豆子ちゃんを彼女に……。うへへへへ」と気持ち悪い笑顔を浮かべていた。
「南無……桜宮は何か予定はあるのか？」
悲鳴嶼に話をふられたAは冷たいお茶を机に置いて口を開いた。
「えっと、実は今年の夏休みの一ヶ月半……
しのぶとカナヲと師範……じゃなくてカナエさんと───────」
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諸刃 - 設定が素敵!ちょっと切ない恋のお話も好きです。「胡蝶蘭のネックレス」には感動して泣きました! (8月14日 18時) (
レス) @page35 id: b434511ad8 (このIDを非表示/違反報告)
侑夏 - 「夏の日の願い」を読んで、他の皆は前世の記憶があるのに凄く切ないなと思いながら読んでいました。最後、無一郎が迎えに来てくれたという流れで、『思い出してくれて良かったな。』と思いました。まだまだ読み直そうと思います！！改めて、完結おめでとうございます！ (2022年1月12日 15時) (レス) id: 04ca5b2a61 (このIDを非表示/違反報告)
侑夏 - 今日初めて読みました。まずは完結おめでとうございます！「師範の願い」からずっとカナエさんの願いを叶えようとする主人公が、凄く感動的でした！！そして、無一郎と結ばれていくという物語に号泣しました。 (2022年1月12日 15時) (レス) @page35 id: 04ca5b2a61 (このIDを非表示/違反報告)
アオ(プロフ) - 夜から読んでたら徹夜してました！本当に面白かったです！話の流れにそっているところがとても実物感があって、キスのところは50回くらい発狂しそうになりました！本当にありがとうございます！最高すぎました！ (2020年8月4日 6時) (レス) id: 0202dd951f (このIDを非表示/違反報告)
りんりん(プロフ) - 遅くなりましたが、完結おめでとうございます。感動でした！ (2020年7月29日 20時) (レス) id: b99d983c73 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：昆布の神
x他1人 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時：2020年7月19日 15時
