つめたくてあつい。25 ページ27
残りの日数が、ただ平凡に過ぎていく。
気づけば八月三十日になっていた。
宿題もやった。終わっている。
あとは、
「……」
記憶はいつか忘れられる。
それは私も同じこと。
自分の人生に起こった全ての出来事を自分の心の引き出しにいつまでも収納できるわけじゃない。
心の引き出しには、限りがある。
新しい記憶にどんどん、どんどん押されて
いつしか過去の記憶は新しい記憶に、グシャッと音を立てて、ひしゃげて潰れる。
記憶なんて、そんなものだ。
明日、私は東京に帰る。
ここには居られない。
帰りの準備をする為、私は持ってきた衣服や本、筆記用具、夏休みの宿題諸々を鞄に押し込み、一ヶ月半借りていたベッドの上にドサッと置いた。
これでいい。
この世界には、花のような鮮やかな色は無い。
もう……
すると不意に部屋の扉の外から、コンコンと音が鳴った。
扉を開けると、そこには柳さん。
「Aちゃん。ちょいと手伝ってくれねえか」
✽.｡.:*・ﾟ ✽.｡.:*・ﾟ ✽.｡.:*・ﾟ ✽.｡.:*・ﾟ
「これは、ここで良いですか？」
「おう。ありがとさん」
柳さんに呼ばれ、物置小屋の整理を手伝った。
これで最後だ。
ちなみに、アキノさんや、しのぶ達は用事で出かけている。
荷物を物置に置いて、額から流れる汗を拭う。
八月も、もう終わるとはいえ、暑さはまだまだ続く見通しだ。
「Aちゃん、おつかれ」
チリンチリンと風鈴が鳴る縁側で、疲労のあまりグデーと倒れ込んでいると、柳さんが麦茶を手渡してくれた。氷が入って冷えきった麦茶を飲めば、すぐに喉が潤う。
はあ、麦茶ってこんなに美味しいんだ……。
隣にすわって柳さんも麦茶を口に流す。
すると、ある物が目に入った。
「……それ、ミサンガですか？」
柳さんの左手首には、夏の太陽に照らされて輝くミサンガらしき物がつけてあった。
今まで気付かないなんて、私の目、鈍すぎ……。
「そうだよ。二十年前に、アキノからもらったミサンガ。もう切れてるけどな」
柳さんは切なそうに、ピンで繋ぎ止めたミサンガを見つめた。
確か、アキノさんは記憶が無いって言ってたような……。
柳さんは語り出した。
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諸刃 - 設定が素敵!ちょっと切ない恋のお話も好きです。「胡蝶蘭のネックレス」には感動して泣きました! (8月14日 18時) (
レス) @page35 id: b434511ad8 (このIDを非表示/違反報告)
侑夏 - 「夏の日の願い」を読んで、他の皆は前世の記憶があるのに凄く切ないなと思いながら読んでいました。最後、無一郎が迎えに来てくれたという流れで、『思い出してくれて良かったな。』と思いました。まだまだ読み直そうと思います！！改めて、完結おめでとうございます！ (2022年1月12日 15時) (レス) id: 04ca5b2a61 (このIDを非表示/違反報告)
侑夏 - 今日初めて読みました。まずは完結おめでとうございます！「師範の願い」からずっとカナエさんの願いを叶えようとする主人公が、凄く感動的でした！！そして、無一郎と結ばれていくという物語に号泣しました。 (2022年1月12日 15時) (レス) @page35 id: 04ca5b2a61 (このIDを非表示/違反報告)
アオ(プロフ) - 夜から読んでたら徹夜してました！本当に面白かったです！話の流れにそっているところがとても実物感があって、キスのところは50回くらい発狂しそうになりました！本当にありがとうございます！最高すぎました！ (2020年8月4日 6時) (レス) id: 0202dd951f (このIDを非表示/違反報告)
りんりん(プロフ) - 遅くなりましたが、完結おめでとうございます。感動でした！ (2020年7月29日 20時) (レス) id: b99d983c73 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：昆布の神
x他1人 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時：2020年7月19日 15時
