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つめたくてあつい。12 ページ14

「───────無一郎さん(・・)

「ほんとに来てくれたんだ」

ふわりと柔らかに笑う無一郎に少し胸の奥が痛くなった。

『無一郎さん』

これは無限列車での任務まで私が呼んでいた無一郎の呼び方。
その後に無一郎に呼び捨てで呼ぶよう促されたのだ。
さん呼びならと思ったが、これまた簡単にはいかない……。

いやいや、まだ出会ったばかりだし
夏休みが終わるまでにまだまだ時間はあるんだから焦らずじっくりと……


自分に言い聞かせるように頷く。


「名前、A、だっけ?」


川辺に腰掛ける無一郎が言う。


「綺麗な名前だね」


……


「ありがとう」


私は笑った。
躊躇いなく、ただ素直にものを言う無一郎が
幼く見えて、おかしくて。

すると無一郎が、川を囲む木々を見ながら口を開いた。


「毎年、春が来ると思い出す子がいるんだ……。
顔は霞にまかれてよくわかんないんだけどね。
で、春が過ぎて夏が来る頃には、自分がどうしようもない罪悪感に包まれる」


無一郎は一息ついた。


「君は僕が頭の中で描く子にそっくりでさ、
……何故か泣きたくなる」


眉を下げ、顔を伏せる。
今すぐに泣きたい。
だけど、君にとって私はまだ、
''興味がある人間''にしか過ぎない。

でもこれだけは嬉しかった。
君の中に少しでも、私という存在がいてくれて。


「君もそっくりなんだよ……
私が好きな人に……」


そっくりどころじゃないけどね。

無一郎を少し切なそうに微笑んで立ち上がった。


「ここ来るの初めてなんでしょ?
案内してあげるよ」


無一郎自ら差し出してくれたその手を私はとった。
叶うならば、もうこのまま何も手放したくないと、
そう願いながら。

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設定タグ:鬼滅の刃・現パロ , 時透無一郎 , 師範の願い   
作品ジャンル:恋愛
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諸刃 - 設定が素敵!ちょっと切ない恋のお話も好きです。「胡蝶蘭のネックレス」には感動して泣きました! (8月14日 18時) (レス) @page35 id: b434511ad8 (このIDを非表示/違反報告)
侑夏 - 「夏の日の願い」を読んで、他の皆は前世の記憶があるのに凄く切ないなと思いながら読んでいました。最後、無一郎が迎えに来てくれたという流れで、『思い出してくれて良かったな。』と思いました。まだまだ読み直そうと思います!!改めて、完結おめでとうございます! (2022年1月12日 15時) (レス) id: 04ca5b2a61 (このIDを非表示/違反報告)
侑夏 - 今日初めて読みました。まずは完結おめでとうございます!「師範の願い」からずっとカナエさんの願いを叶えようとする主人公が、凄く感動的でした!!そして、無一郎と結ばれていくという物語に号泣しました。 (2022年1月12日 15時) (レス) @page35 id: 04ca5b2a61 (このIDを非表示/違反報告)
アオ(プロフ) - 夜から読んでたら徹夜してました!本当に面白かったです!話の流れにそっているところがとても実物感があって、キスのところは50回くらい発狂しそうになりました!本当にありがとうございます!最高すぎました! (2020年8月4日 6時) (レス) id: 0202dd951f (このIDを非表示/違反報告)
りんりん(プロフ) - 遅くなりましたが、完結おめでとうございます。感動でした! (2020年7月29日 20時) (レス) id: b99d983c73 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:昆布の神 x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/  
作成日時:2020年7月19日 15時

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