夏の日の願い【時透無一郎】

つめたくてあつい。11 ページ13

────誰かを探している。


自分の心の何処かにある、そんな志に気づいたのは物心がついてからずっと。

すぐにでもこの腕の中に収めたくなるほど愛しく感じる。
でも、それが誰なのかわからなかった。
頭の中にまるで霞みがかったようで、
それでもその中に一輪の花が咲いていた。

霞の中でも淡く輝く花霞。

可憐な声で僕を呼ぶ
その声はなんだっけ？


「……無一郎さん」


昨日初めて出会った子。
何故かその子はいつも春に頭の中で描いていた女の子にそっくりだった。


「ほんとに来てくれたんだ」


律義なんだな、と思う。
桜色の瞳には彼女も同じように霞みがかっている気がした。


「私、忘れっぽくないので」


やっぱり真面目だ。
だけど少し寂しそうに見える。


「名前、A、だっけ？」


どこか懐かしみのある、味わい深い名。
それが何故か妙に嬉しくて、


「綺麗な名前だね」





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A視点

いつだって、大切なものが壊れるのはあっという間だった。

前世ではカナエさんを喪った。
カナエさんだけじゃない。
私がしくじれば煉獄さんやしのぶも死んでたっておかしくなかった。



……今は前世とは違う。
鬼はいない。誰かが死ぬことは無い。


……と確実に言い切ることはできないけど、
でも今は生きている。



形に残っていなかったとしても、
それだけが全てじゃないから。





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【令和コソコソ噂話】
前世の二人の子供である蘭ですが、幼い頃は今までの登場回のように無邪気な明るい子でした。
しかし比較的穏やかな性格のAや普段は物静かな無一郎の影響か、大きくなるにつれて性格が柔らかくなっていきました。
ちなみに、今世に蘭はまだ産まれていません。

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