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人魚姫 VIII ページ9

その日から碧晴はAに会いに行くようになった。
Aはいつも海岸で歌っては、海に映る月を見つめるという動作を繰り返していた。

そして月を見るAの目は妙に悲しく寂しいものだった。
まるで何かを求めるような、探しているような……。



喋ることが好きではない碧晴だったが、Aと話すことは何故だか胸が踊るようだった。
自分とは全くの正反対だと思い込んでいた彼女は、話してみると、夜の象徴のように見えるのだ。

綺麗だと、美しいと聴き込んでいたその歌も、思えばただ独りで寂しく歌っていただけなのだから───。


「この前ねーウミガメが産んだ卵が孵って海に戻っていったんだー!」


純粋無垢なその笑顔で語るAを見て、碧晴は少し目を細めた。

彼女と話す時間、それだけは楽しいのだ。
全てを忘れられる。
心の中にある劣等感も、全て。
無愛想な自分が、素直になれる。
Aの前でだけ───────────。






〜♪♪♪〜



「何だか楽しそうね」


自宅でで夕飯を食べていると、母、陽子が碧晴の顔を見て嬉しそうに言った。


「……そう?」


「ええ!」


母は大きく頷き、「最近いいことでもあったの?」と聞く。


(いいこと……)


だが確かに、自分の中で何かが変わり始めたのは────


「A……」


「A?」


母が首を傾け、碧晴はゲッと自分が言ってしまったことに気づいた。


やってしまった───────


Aのことは誰にも知られたくなかった。
何故かはわからない。
プライドのようなものか否か、自分にとって秘密の存在であってほしかったのだ。

だが母のキラキラと星のように輝いている目を前に嘘をつくのも無理そうだ。

碧晴は自身の甘さに呆れつつ、口を開いた。

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設定タグ:オリジナル , 恋愛 , 人魚姫   
作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
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鮭の神様(元 レオ)(プロフ) - すごい…!!私の好きな綺麗な世界観…!更新お疲れ様でした! (2020年6月14日 23時) (レス) id: 86c31a4b24 (このIDを非表示/違反報告)
昆布(プロフ) - 日向鬼@低浮上さん» ありがとうございます。「綺麗」と言ってもらえて嬉しいです〜! (2020年6月6日 20時) (レス) id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
日向鬼@低浮上(プロフ) - もう凄いわ僕((本当に題名で当てられるようになった…待ってました!(ドンドンパフパフ)昆布さんのお話は綺麗でなんかお話し読んでて楽しい(?)から大好き!頑張って! (2020年6月6日 20時) (レス) id: 98b52071c9 (このIDを非表示/違反報告)
昆布の神(プロフ) - テイル@パピコ同盟さん» ありがとうございます。ちょっといろいろと勉強しました〜 (2020年6月6日 19時) (レス) id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
テイル@パピコ同盟(プロフ) - 夢主の画力が良すぎィ↑私には到底辿り着けないような境地だぁ!そして文章力も圧倒的に上がってきている!羨まし! (2020年6月6日 19時) (レス) id: a6ac34b766 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:昆布の神 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon723/  
作成日時:2020年6月6日 18時

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