師範の願い【時透無一郎】参

orchid １１１ ページ35

その場で座り込んでしまった私にとって悲鳴嶼さんの大きい背中はとても頼もしく見えた。



悲「桜宮。怪我の治療をしろ。一箇所とはいえかなり深い。
胡蝶が来ている。不死川にもそう指示している。

治療している間は私が引き受けるから問題ない」


しのぶ来てんの！？


貴「…すみません」


ここにいては悲鳴嶼さんの邪魔になる。


私は一度戦線から離脱した。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
黒死牟side


鉄球を振り回している屈強な男の肉体を透き通る世界で見た。



素晴らしい…

極限まで練り上げられた肉体の完成形…

これ程の剣士を拝むのは…
それこそ三百年振りか…




鉄球を振り回しているためか空気が引き寄せられる。




暫く睨み合いを続けて先に動いたのは男の方だった。


鉄球をこちらに投げてきた。



【月の呼吸】




技を出そうとすると手斧が飛んでくる。


手斧まで投擲するのか

両手共武器を離すとは…




［岩の呼吸 弐ノ型 天面砕き］



男が鎖を巻きつけてきた。


刀で斬ろうとするとジジッと音がする。

この鎖は斬れぬ！！


下に下がるが髪がちぎられた。



鎖、斧、鉄球


全ての鉄の純度が極めて高い武器

私の肉から造られたこの刀では斬る前に灼け落ちてしまうだろう。

これ程太陽光を吸い込んだ鉄は

刀匠の技術が最盛期たる戦国の世にも発見されていなかった。



黒(しかしそれも…間合いの内側に入れば良いだけ…)


しかし男は軽々しく斬撃を躱す。



この武器を手足の如く扱える筋力

あの重量の図体でこれ程の身軽さ俊敏さ
俄かには信じ難し





刀に鎖を巻きつけられ刀が折れるが問題ない。


【月の呼吸 弐ノ型】


［岩の呼吸 肆ノ型］



【珠華ノ弄月】


［流紋岩・速征］





黒「折られた所で…すぐに再生するのだ…
攻撃は…無意味…」




黒「哀れな…人間よ…」



悲「…これは…無惨の時まで温存しておきたかったがここで負けては元の木阿弥」






悲「今使うも止む無し！！」



男の両腕には痣が発現していた。

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