𓂃 𓈒𓏸216𓏸𓈒 𓂃 ページ27
*
「お前泣いただろ」
「泣いてません」
「じゃあその目どうしたんだよ」
「虫に襲撃されました」
「あっそ」
三年生がいる最後のミーティングと、ようやく100本サーブを終えた白布さんが、私の隣で汗を流してボトルを開けた。
「白布さんも泣いてたじゃないですか」
「俺は人前で泣いたけど、お前は絶対一人で泣いたタイプのやつじゃん」
「泣いてません」
「『白布さん
私より一枚上手の彼に適うわけもなかったようで、私は呆気なくレスバトルに敗北した。
「影山とは話せたかよ」
「話しました」
試合前に感じていた苛立ちの正体。
私はその正体に気がつきたくなかった。知らない方が、きっと楽だったから。
「影山がムカつくと思ってたんです」
どうしようもない苛立ちを影山にぶつけていた。
そして、影山にぶつけていたその苛立ちの正体。
「本当は昔の自分にムカついてたんですよ。……影山に信じてもらえなかった、昔の自分」
私達は影山にあんな顔させられない。
信じてるなんて、そんなことを思わすことさえ。
なのに烏野はできた。その事実が、嫌で、腹が立って。
「今は？」
「……しょうがないかなって」
今までは“仕方ない”なんて無責任な言葉では片付けられなかったこの気持ちが、何故か今は片付けられている。決して清々しい気持ちではないし、納得もできていないけれど。
「国見……青城の13番に、影山は烏野にいる方が幸せそうって言われて、納得できなかった。昔の時間が全部無駄だったみたいで」
＿＿＿『自己主張の強いセッターは要らんわ〜』
＿＿＿『奴にはセッターへの強い
「でも、その人にとっていい環境、悪い環境は少なからずあるのかなって。……影山は、今は
「お前は？」
「どういうことですか」
「敗けるのが嫌だったんだろ。本当に今ここで幸せだった？」
そんな皮肉っぽく言わなくても、と思ったが、今はみんなセンチメンタルなので飲み込んだ。
「敗けるのが嫌というか、あの空気感が耐えられなかっただけで……。今更、後悔なんてしないです。そんなこと言わないでください。……みんなが、絶対にいちばんカッコよかったです」
そう言うと、白布さんは私から目を逸らして、また「あっそ」と素っ気なく答えた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1063人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
昆布の神(プロフ) - いよかん。さん» コメありです！ 頑張りますね！💪 (3月25日 8時) (
レス) id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
いよかん。 - 赤い星おめでとうございます！！ これからも楽しみにしてます！！ (3月24日 19時) (レス) id: e0560282da (このIDを非表示/違反報告)
昆布の神(プロフ) - とくめーさん» コメありです！ そう言っていただけてめーっちゃ嬉しいです🥰 面白いお話を書けるよう頑張りますね！ (3月24日 7時) (レス) @page43 id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
とくめー - めっっっっちゃ面白いし投稿頻度高めなのすっごい最高です。めっちゃ好きですこの作品愛してます💕 (3月23日 22時) (レス) id: 70b13c5b03 (このIDを非表示/違反報告)
昆布の神(プロフ) - 葉華さん» コメありです！ 鬼滅書いてたの懐かしいです笑 そう言っていただけて嬉しいです🥰 新学期の準備もありますし、お互い体調には気をつけましょう。お気遣いありがとうございます！ (3月19日 6時) (レス) id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：昆布の神
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時：2024年3月9日 14時
