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「私は好きですよ」
私は好きって。Aは試合直前、宮侑に対して『くそやろう』って言ってたじゃんか……。
「白布さんが」
＿＿＿＿“白布さんが”！？
その困惑は一気に白鳥沢中に波及し、みんなが目を皿にして白布とAを見つめ、直後 一気にみんなの声のボルテージが上がって騒がしくなった。
「は！？ なに！？ どっ、どどどどどういうこと！？ 公開告白！？！？」
「やっぱ結婚すんのか、俺以外の奴と！！」
「いつ関係が進展したんですか！？」
「ハネムーンはどこへ！？」
勝手に付き合っていることにして、部員が質問攻めにしていく。しかし、Aにはまるでそれが聞こえていないようだった。
「いつものやつ、見たいです」
それは励ますためのものではなく、自分が思っていることを、ただの自分の欲求として言っただけだったのかもしれない。
タイムアウトの終わりを知らせるホイッスルが鳴った。
俺は白布に背を向けて、オレンジコートを目に焼きつけた。
＊
白布 side
本当に何も考えていないんだろうな。葉山Aというのは。
梟谷戦のときは天童さんからの脅迫にビビっていたくせに、今度はそれを無自覚に俺に向けてきた。
＿＿＿“あなただったらできるでしょ。だってあなただもんね。いつもやれてるもんね。”
いつもと変わらないはずの瞳の奥から、そんな声が聞こえた気がした。
中学時代からそういう奴だったのか、高校に入ってから変わったのか、それはよくわからない。
ただ、“できないの？” みたいに言われると、なんだか無性に腹が立つし、意地でもやろうとなるのが人間の
信頼か脅迫か、それはこの際どうでもいいと思ってしまった。
選手交代の合図。瀬見さんの背番号、“３”のカードを掲げる。瀬見さんはそれを見て、牛島さんに何か声をかけてから、小走りでこっちにやってきてカードを受け取ると、瀬見さんは俺を見て不敵な笑みを浮かべた。
「できるよな？」
この人もかよ、と無意識のうちに眉に皺が寄った。
恐ろしいことだ。どいつもこいつも。
「……はい。大丈夫です」
瀬見さんとすれ違って、コートに戻る。
＿＿＿『私は好きですよ。白布さんが』
＿＿＿『いつものやつ、見たいです』
ただ一人でもそれを望むやつがいるのなら、思いっきりやって見せつけてやろう。
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作者名：昆布の神
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時：2024年1月12日 2時
