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五色 side
俺は今、認めたくはないが非常にビビっている。
止まらない冷や汗を流す中、ベンチメンバーの柴田がAに「……あのさ」と話しかけた。
「そのTシャツなに？」
「なにって、Tシャツ」
「いや、それはわかるんだけど、さ……」
翌朝。Aが着てきたのは『元気』と書かれた文字入り白Tシャツ。だから、なんでそんなもの持っているんだ……。絶対青城のエースに貰ったもの以外に自分で買っている。間違いない。
「元気です」
「昨日大号泣してたくせに何を言う」
監督達が来る前に部員達の前で公言するAに、天童さんが冷静にツッこむ。
「いや元気ですから。文字通りです」
「……何考えてるか知らないけど、そんな主張したって骨は治らないからね？ そのギプスがすべてを物語ってるからね？？」
天童さんに言われて、Aが下を向いてぶら下げられた右手を見た。なんだろう。このコント感。
「……とにかく、無用な心配は！ 結構なので！」
＊
瀬見 side
「……」
「……」
「…………」
お互いにみんなが黙って、視線だけで会話する。
チラ、と視線を動かすとスコアブックを開いている一年に葉山が付け方を教えていた。それは簡潔かつわかりやすい説明なようで、一年はすぐに納得したような顔をした。
「……なんか、いつもとあんまり変わらない……？」
天童がそう言うと、隣で隼人が冷や汗を流しながらコクンと頷いた。
少しくらい練習がいつもよりもたつくかと思えば、何故か全然そんなことなかった。定期的に一年が
団結すれば何とやら、A中心に仕事をしているときと効率はさほど変わらない。むしろ人数が多いので早い気さえしてきた。
「葉山が、仕事内容まとめた紙をコピーして渡したらしいですよ」
白布と川西がタオルを肩にかけて歩いてきた。
「ナニそれぇ……」
「もしかして、葉山は自分が怪我することを想定していた……？」
「Aちゃんのメモ癖あるじゃないっスか。アレらしいです」
「でも仕事内容書いてあるだけだろ？」
すると、川西が「いや」と首を振った。
「どうしたら仕事を効率化できるかとか、事細かに書かれてあるそうで……」
「いや普段からそんなこと考えねーだろ普通」
「本人がいちばん心配性……」
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作者名：昆布の神
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時：2024年1月12日 2時
