北一出身の白鳥沢マネージャー【3rd season】【ハイキュー】 (ページ48)

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「……まあ、葉山があんなに泣きじゃくったのは、それが予想できたからってのも少なからずあるだろうな。それなりに頭は回るヤツだし」

賢二郎が静かに言った。

感情移入しやすい性格。
悲願の全国を目前に止まることを強要された中学時代。

北一は立ち位置的には強豪だったし部員も多い。試合に出たい、コートに立ちたい、もっと練習したいという彼らの切実な願いと欲求は理解していただろう。

白鳥沢に限らず、強豪は実力主義。思い出選抜なんかないし、弱者にはチャンスすら与えられない。

それでも熱烈に、そして鮮烈に憧れる舞台。
誰も、そこに立ちたいと思うのは当たり前の欲求。

「俺らはさ、入学したときからそれが当たり前だったもん。だからある程度すぐに受け入れられたけど、一年はAちゃんがいる環境が当たり前だったから、しんどいだろうな」

「しんどいのは葉山も同じだろ。アイツ、何かしてなきゃ落ち着かないって感じだし」

「確かに。……何気に、いちばんダメージ食らってるのはあの子かもね」

今の努力次第で、もしかしたら春高全国にはせめてベンチ入りはできるかもしれないというのが今の時期。みんな、この大切な時期を棒に振りたくない。

……そんなことは、マネージャーだってわかっているだろう。だから、Aちゃんは“みんな(・・・)が大事な時”という表現をした。自分の役目は、自分がいちばん理解しているから。

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A side

夕食を食べる気にもならず、薄暗い部屋の中で慣れない左手を使ってノートタイプのリングファイルを開いた。

そこには、昔書いたマネージャーとしての役割のメモがある。

みんなにバレーボール選手として何かポリシーがあるとするなら、私には私なりのマネージャーとしてのポリシーがある。

マネージャーとはこういうもの、と心に決めたことが。

心配をかけてはいけないし、仕事を怠慢してはいけない。選手に最大限の練習環境を用意することが当然。

あの子を庇って落ちたら酷い怪我をする。
そんなこと、頭のどこかでわかっていた。

だけど動かずにはいられなかった。

いつも頑張ってるの知ってるから。
体育館から、陸上部の練習風景はよく見える。あの子は本当に走ることが好きで、そして並々ならぬ陸上選手としてのプライドがあるんだということがひしひしと伝わってくる。

努力を惜しまない人を助けたいと思うのは、誰だって当たり前だろう。