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A side
『Aちゃんさ、賢二郎にこれ届けてきてくれる?』
練習後、川西さんから渡されたのは白布さんから借りていたという授業ノートだった。いつから借りていたんだ……?
『ご自分で届けないんですか?』
『俺、今日用事あるんだ。でもそろそろ返さないとマズイから。賢二郎には今度俺から言っておくからノートだけ先に返しておいて』
「白布さん」
体育館に彼の姿が見当たらなかったので外に出ると、やはり水道で涼んでいた。お盆が過ぎてもまだ暑さは残っているし、ハードな練習が続いているので、ほとんどの人は定期的に水道に涼みに行くのだ。
ちなみに今日どさくさに紛れて工くん達一年生と一緒に、水道に水を貯めて足を入れて遊んでいたのは内緒だ。
「川西さんからです」
ノートを差し出すと、白布さんは「……アイツ」と呟いた。
「ありがと」
私からノートを受け取って白布さんが言った。
白布さんのノートって綺麗なのかな。とり方上手そう。中間試験で勉強教えてもらったとき、字体がすごく綺麗だった。
「……あのさ」
白布さんが何故か重々しく口を開いた。
「なんですか?」と次の言葉を待っていると、白布さんが私を見て、また目を逸らした。
もしかして、何か付いてる? いや、さっきトイレは行ったし鏡もそのとき見てきたはずだ。
白布さんは顔を上げてまた私を見た。
「ごめん。……こないだ態度悪くて」
「ん? そんなことありましたっけ?」
そう言うと、白布さんが“コイツまじか”という顔をした。
なんだよ。
「ボトル押し付けたじゃん」
「…………ああ。え、アレですか? 気にしたことないので大丈夫です」
というか、既に忘れかけていた。付随的に工くんに牛島さんに喧嘩売った疑惑を持ちかけたことも思い出した。ごめんよ。
何があったのかは今もよくわからないけど。
「時々機嫌曲がることくらい、人間なんだからありますよね」
中学のときもそうだった。時々なんて範囲に収まらない執着や羨望にはマズイなと思ったけど。
「……お前さ」
白布さんが何か訊ねたそうに口を開いたけれど、少し考えてから「今の無し」と取り消した。
「今はまだいい」
今は、という言葉に未来に対する不穏な予感がしたが、触れたくなかったので私は何も言わなかった。
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アンケート結果見てから無理やりねじこんだから、北斗兄さんの恋路激ウスだぜ……ごめんて( ◜ᴗ◝ )
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作者名:昆布の神 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時:2024年1月12日 2時