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「……あ？ ん？ 何？ どういうこと」
「Aちゃんからは、セッターに対する執着じみたものを感じるっていうか。賢二郎はそれに気づいてるのかも」
「……それ、さっきのに関係あるか？」
Aのセッターに対する執着。それに白布が気づいているとして、さっき不機嫌になったことと関連性があるとは思えない。しかし、そんな俺の考えは天童の言葉によって納得させられることになった。
「彼氏っていう特別な存在ができたら、Aちゃんは絶対
Aが中学時代に経験したことを俺達は知っている。
だけどそれは、北一の試合を見ていたヤツから回ってきた話でしかなく、Aの口からあの時はこんなことがあって、自分はこう思ったんだ、という彼女自身の感情や思いを聞かされたことはない。
「本当に太一と付き合ってんのかどうか知らないけどさ、だとしても、
「……確かに、俺もそう思うかも」
「まあ賢二郎がどこまで考えてるのかは知らないけどね」
Aの方を見ると、まだ工となんで白布が怒っているのか論争を繰り広げていた。論争というか、「喧嘩売ったでしょ」、「売ってねえよ」という言い合いだけど。
「いつか、教えてくれたりすんのかな」
「しーらない。それは俺達がどうこうできることなんかじゃなくて、Aちゃんの問題だよ」
＊
一週間後、お盆休みが明けた。
部活に来た白布は思ったよりも普通な顔をしていたので、天童から言われていたとはいえホッとした。
そして、部活にはまた違和感が生まれた。
「……なんか、おかしいよなぁ」
「俺も思ってた」
獅音に続いて隼人が頷く。
既視感のあるこの光景。
一週間前なら、見ればそこには二人きり、しかも至近距離で話すAと川西の姿があったはずだった。
「……」
「……」
二人はまったく会話を交わさず、何ならAは工と、川西は白布と……といった具合に以前通りの仲良しペアに戻っている。
「……もしかして、別れ……？」
隼人が言ったことが聞こえていた部員の耳がピクリと動いた。しかし、部活内カップルが一週間で破局したことを喜べるはずもなく、人知れず気まずい空気が体育館に流れ始めた。
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作者名：昆布の神
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時：2024年1月12日 2時
