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川西 side
「やるんだったらお盆休みですよね」
「そうだね。それまでは練習詰まってるから俺達も行けないし……」
今日の練習メニューが終わり、本来ならば自主練を始めるのだが、最近は考えることが多いので、自主練の前にAちゃんと体育館の隅で予定を立てた。
「帰省とかはなさらないんですか？」
「しないよ。ばあちゃん家近いからさ。Aちゃんのほうは？」
「山形行きますけど日帰りです。じゃあ、お互い時間には余裕ありますね」
「どうする？ ベタだけど
「でもお盆あたりはクラゲが……」
「あ、そっか。あとは……仙台とか？」
「やっぱり近場なら仙台がいいですよね。なんでもありますし」
Aちゃんが自分のメモ帳にボールペンでサラサラと案を書き綴っていく。メモ帳やノートはいつも持ち歩いているらしい。本人によると、どうやら彼女にはメモ癖があるらしく、部活のルーティンや日常で役立つ豆知識、それだけでなく人の趣味などもついついメモってしまうらしい。
なんか、いつの間にか弱みとか握られてそう。Aちゃんに限ってそんなことはないか。
「仙台で何する？」
「映画とか……」
「会話無くならない？」
「確かに……。無難に食事の方がいいですかね」
「そうだね。一緒に出かけるの初めてだし、まずはそこから……」
「＿＿＿危ない！」
会話を遮る大きな声。後ろを見ると、流れ球が迫っていた。軌道的にAちゃんに当たりそうになっており、Aちゃんが反射的に目を瞑ったのに対して、俺は反射的に手が出た。
手にボールが当たってバチンと音が鳴る。行き場をなくしたボールはてんてんと転がっていった。
「スマーン！」
流れ球を飛ばしてきた部員の声もそこそこに、俺はAちゃんに目を向けた。
「大丈夫？」
「だ、大丈夫です。すみません。
大きな音が鳴っているのか、Aちゃんが自分の心臓に手を当てながら言った。
元々運動は苦手なようだし、慣れない場所と威力での流れ球に対応できないのは自然なこと。
(……でも)
俺は先程流れ球を弾いた手を見つめた。その違和感は、きっと間違いではないと思う。
……さっきの流れ球。感触的に、絶対に本気のサーブでも取りこぼしでもなかったような。寧ろ、わざと手加減されたボールのように感じた。
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作者名：昆布の神
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時：2024年1月12日 2時
