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「娘のように可愛がっている女の子が男と付き合うんだぞ？ 付き合うってのがどういうことか、お前わかってるのか？」
「バカにしすぎだろ。若利じゃあるまいし、男女の交際くらい俺だって知ってるわ」
「英太くんこそ若利くんのこと恋愛方面で小馬鹿にしてない？？」
かつて若利のことを『恋したことなさそう』、『恋を鯉と勘違いしてそう』などと言った天童と隼人を咎めた俺に対して、天童がどこか呆れた顔で言った。
そして、隼人が神妙な顔つきで続ける。
「俺達の知らないところであんなことそんなことするんだぞ？ いいか、英太。もう一度言うぞ？」
＿＿＿＿“娘のように可愛がっている年下の女の子が、だぞ？”
そう言われた瞬間、自分の胸の中がからっぽになった。
＿＿＿＿『！？ 怪我したんですか？ 大丈夫ですか』
＿＿＿＿『瀬見さぁ〜ん……』
＿＿＿＿『おーよしよし』
初対面ではビビられたものの、今ではAのほうから泣き縋られるくらいの関係にはなった。
そんなAに、彼氏……。
＿＿＿＿『瀬見さんのも好きですよ』
「…………」
「英太？ ……英太！？ 英太っ、しっかりしろ、戻ってこい！」
完全にゾーンに入った俺の肩を獅音が必死に揺らした。
ヤバい、駄目だ……俺がそっち側に行ったら
「さすがに堪えたか」
「イイお父さんになるよ、英太くん」
「あの、瀬見さんの魂抜けてますけど……」
呑気な隼人と天童に対して、唯一工だけが俺の心配をしてくれた。お前はいい先輩になるよ……。
「意識失ったらまずは叩いて再度意識確認ね。よろしく若利くん」
「わかった」
「やめろやめろやめろ！
「あ起きた」
手を構えた若利が見えた瞬間、自分の危機管理能力が過敏に反応して俺はようやく我に返った。そういう意味では心の底からありがとうと言いたい。
「……でも、好きになったらしょうがねえだろ」
つらいことや苦しいことなんて今まで何度もあった。
それでもバレーボールを続けるのは、好きだからだ。きっと恋愛だって同じだろう。
「まあ俺らだってそんな鬼畜じゃないよね」
「ああ」
後頭部で手を組んだ天童に隼人が頷いた。
「だから審査しちゃえばいいんだよ。本当に太一にAちゃんと交際する資格があるのかを、さ」
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作者名：昆布の神
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時：2024年1月12日 2時
