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「若利は後半結構上手かったなぁ」

「いや……今回は自分でもそれほど上手くなかったと思う」

「スミマセン、俺のトスが不十分で……」

「気にするな白布。みんな同じだ」



牛島さんはそう言うが、ビーチバレーに対応するまでの時間、俺よりも及川の方が明らかに早かった。やっぱり上手いなと再確認させられて、少し悔しい気持ちもある。

当の及川に関しても、もう白鳥沢に喧嘩を売る気力もないようで、汗を流して肩で息をしている状態。


……部活で、葉山が疲れたときすぐ飲めるようにドリンクを用意してくれているのは、些細なことで、でもすごくありがたいことだと再度自覚できたいい機会だった気がする。



「ふー……。おーいかーわくーん……。もうやめない? ……疲れたし」



天童さんが、最後に一番の本音を添えて試合の終了(ドロー)を提案した。途中から天童さんは暑さとスタミナ切れのダブルパンチで勘も思考も鈍り、ブロックがヘロヘロだった。もういろいろ限界なのだろう。

及川が膝に手をついたまま顔を上げた。



「はぁ……は……。…………ん……?」



及川が何か見つけたように目を丸くしたので、条件反射でみんなも後ろを振り返る。

目に飛び込んできたのは、ハシゴまで使って大がかりな作業をしながら砂いじりをしている海の家のオッサン達&DK(男子高校生)JK(女子高校生)


天童さんが僅かに興味を持ったのか、重そうな体を動かしてゆっくり近づいていったので、とりあえずみんなついていくことにした。

つーかデカイな。某ディズニー映画に出てくる氷の女王の城を模倣しようとでもしてんのか?



「えいたくーん。何やってんの……?」



砂を水で固めている瀬見さんに天童さんが声をかけると、振り返った瀬見さんは「あっ! お前らもう試合終わった?」と言った。



「終わったっていうか……」

「ちょっと手伝ってくんね?」

「いや俺たち……」

「手伝ってくれたら海の家で今日だけメシ無料にしてくれるって!」



それを聞いた食べ盛りの男子高校生達の目が光り出す。
スコップやバケツを手に取ろうと、一斉に我先にと走り出し、それを見て、俺もこれやるノリかよとゲンナリする。

やらないと、あとで天童さんから怒られはしないが茶々を入れられるのは目に見えている。



(くそ、絶対にやりだしたの葉山だろ……)

(なんか白布さんに睨まれてる気がするけど、知らない(川西さんの)フリしとこ……)

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作者名:昆布の神 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/  
作成日時:2024年1月12日 2時

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