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チラリと横を見ると、完成には程遠いであろう作り途中の砂のお城。日没までに完成するかさえ怪しいところだ。
「………………塩キャラメル一箱」
そう言うと、国見の耳がピクリと動いた。
私の隣で、渡さんがおやおや？ とでも言いたげな顔で国見をこっそりと盗み見る。
「…………もう一声」
国見が私を試すかのように言った。
(こいつ……)
絶対商売とか上手いタイプだ。将来はセールスマンになると良いだろう。
「仙台駅前カフェ、塩キャラメルロールのアイス乗せ」
国見はしばらく黙って私を見つめた。読み合いをしているかのような緊迫感が流れ、やっと口を開いたかと思うと、国見は「まぁやってやっても」と言った。奢ってやるって言っているのに、なんだその上から目線。まぁ、私も手伝ってもらう側だからあんまり言えないけど……。
＊
白布 side
多くの者達の息切れした短い息が聞こえる。俺もその中に含まれている。
重い体を動かす気にもならず、白い砂の上に転がったボールを見つめた。しかも暑いし、少し体を動かせば汗がポタポタと落ちてきて不快だ。しかも暑いし。
「＿＿＿何やってんだろ、オレ達」
(((ついに言いやがった……)))
ボールを見て立ち尽くしたまま、及川が我に返ったように静かに言った。
体力に自信のありそうな青城のエースが、珍しくスタミナ切れしたかのように腰に手を当ててイラついたように口を開いた。
「
そう言いつつも、普段の威勢はなく及川に手を上げることもしない。
ビーチバレー。普段の力加減では戦えず、本質的なセンスが問われる。さらに、慣れない砂の上ということもあって最初はまともに試合が成立せず、慣れてきた今でさえ、互いにビーチバレー初心者なせいで勝敗がどっちつかずとなり、みんなのスタミナが切れた。今ココ。
「……砂の上ってこんな動きづらいのか……」
「全然飛べないし、フライングもできないな……」
三年生の山形さんと大平さんでさえこうなる始末。
……しかも、暑い。
＿＿＿＿＿＿
「塩キャラメル一箱」
「もう一声」
「仙台駅前カフェ、塩キャラメルロールのアイス乗せ」
瀬見(あんな大真面目な顔でスイーツの話してるの面白いな)
川西(あんな可愛いスイーツで高度な駆け引きしてるの面白いな)
渡(国見の扱い方うまいなぁ、あの子)
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作者名：昆布の神
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時：2024年1月12日 2時
