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「……葉山ってさ、最初から部活入ってたの?」

「部活は最初から入ってた。仮入部自体は他の奴らより一週間くらい遅れてたけど」

「なんで?」

「最初はマネージャーやるの渋ってたから」



「ふーん……」と無意識のうちに小さく声に出していた。
相槌のつもりでもなく、ただ反応として口に出ただけ。



「……葉山、なんでまた部活入ったか知ってる?」

理由(ソレ)は知らね。でも、入学してから一週間は、めちゃくちゃ暇そうだった」



五色が頬杖をついてビーチバレーを観ながら言った。
インハイ予選のとき、ウシワカに張り合っている姿が印象的だったが、話してみると意外と落ち着いている。自分に自信を持ちながら、実は極めて俯瞰的(ふかんてき)に自分を見ているタイプだ。



「いつも席からなにか探してるみたいに空見上げて、結局どこにも行かないくせに放課後はしばらく自分の席で何かやりたそうにして座ってた」

「じゃあなんで部活行くようになったの」

「暇そうだったから声かけたら、意外とあっさり来た」

「……そうなんだ」



心のどこかで期待していた何かは、海の底へと沈んだ。

卒業式の日、葉山にこれからもマネージャーを続けることを勧めた。葉山が中一の時に見せた、バレーボールを見ている時のあの楽しそうな顔を覚えていたから。


___『白鳥沢でマネージャーやんのか?』

___『んー? んー……』


金田一の質問を曖昧な返事で躱した葉山。きっと俺は、葉山の理由にはなれなかったのだろう。



「葉山、元気?」

「元気。なんか、たまにちょっと……アレなとこあるけど。前からあんな感じなの? オタク気質なところとか変なTシャツ着てたりとか、挙句いきなり髪染めたりとか……」

「中学のときから変なヤツではあったよ。俺アイツに……変な起こされ方されたことあるし。いきなり銀髪にするのはさすがにびっくりしたけど」



ああやって自由にできるのも、今の白鳥沢の環境があるからだろう。白鳥沢も強豪の宿命か、妙に変でクセのあるヤツらが多いし。



「あとメモ癖があって、必要なこと以外にもしょうもないこと書いてるときがあった」

「どんなやつ?」

「『長距離走は死にそうになってもあんまり死なない』とか」



何言ってんだこいつと思うようなメモも多いが、本人は大真面目にこまめにメモしているのだから笑える。書き溜めたメモ達が役立つ日がくると、本気で思っているらしい。

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作者名:昆布の神 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/  
作成日時:2024年1月12日 2時

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