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四日目。結論から言うと、前日の相手、稲荷崎高校は準決勝に勝ち決勝へ駒を進めたが、最終的な優勝校は東京都代表の井闥山学院となった。佐久早聖臣がいるところだ。
インターハイの全日程が終わり、今はスクールバスで宮城へ戻っている最中。すっかり暗くなった外を意味もなく見つめていると、近くでお祭りが行われているらしく、屋台が並んでいるのが見えた。
(お祭り……)
懐かしい気持ちになった。
いちばん幸せだったときの話だ。
しかし、そのお祭りの風景はすぐに見えなくなってしまった。また単調なつまらない景色になり、私は飽きて眠ることにした。
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空気に乗って
お腹の底に響く太鼓の音。
食欲をそそる特有の香り___。
「Aちゃん!」
パチンと泡が弾けるような感覚。
遠ざかっていたはずの、お祭り特有の匂いや音が鮮明になっていく。
「……なんですか」
「え、ホントに話聞いてなかった系!?」
及川さんがショック! という顔をした。
……なんだっけ。ああ、そうか。
バレー部のみんなでお祭りに来たのか。
「射的! 一番多く景品取れた人が勝ちね!」
「分かりました」
射的か。やったことないんだけど、できるかな。
銃を構えて、適当に景品を狙った。
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「…………」
「うわっ、葉山射的ヘタクソ」
「ていうか目ェ細めすぎだろ」
全弾全滅した私に、国見と金田一が口々に言った。
何もそこまで言わなくても……。
「葉山」
「……何?」
影山がイカ焼きを食べながら私に声をかけた。
ていうか、いつの間に買ってきたの。そのイカ焼き。
「お前景品ほしくねぇのか?」
「………」
「ちょ、飛雄やめてあげなさい! わざと外してるわけじゃないんだから!!」
トドメをさしてきた影山に落ち込んでいると、及川さんが慌ててフォローしてきた。
「だって、見えないんだもん」と言うと金田一が呆れた顔で口を開いた。
「視力悪いくせに裸眼で生きてるからだろ。いい加減眼科行ってメガネかコンタクトつくってこいよ」
「メガネもコンタクトもなんか怖くない?」
「コンタクトはともかくメガネが怖いって……」
「太ったりしたら、いちばん最初に壊れるパーツかもよ?」
「まあまあまあ! 射的はここら辺にしてなんかご飯食べに行こっか!?」
軽い口喧嘩を始めそうになった私と金田一を見兼ねてか、及川さんが仲裁に入るように食事を提案してきた。
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作者名:昆布の神 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時:2024年1月12日 2時