𓂃 𓈒𓏸110𓏸𓈒 𓂃 ページ17
*
「弱いところは意地でも見せようとしないでしょ。影山もそういう奴だった」
＿＿＿『ねえ、仲直りしなよ……』
中学時代の自分が見える。オドオドして自信がなくて、猫背で背中が丸まって声も小さい。今もずっと変わらないもの。私だけが、変われないもの。
拒絶されることは怖いから。
余計なことをしたら、見捨てられるかもしれないから。
“いらない” と言われることが、それでもいちばん怖いと知っているから。
「───……私は、隠してないです」
寧ろ、弱いところをひけらかしてばかりだろう。
初対面では露骨にビクビクして相手に不快な思いをさせて、誰かの役に立ちたいと思っても、それを実行できたことなんてない。
だから、きっと、絶対、強がったことなんてない。
「俺は葉山さんのことよく知らないから、葉山さんがどういう人間か、もう言えることなんてないけど」
赤葦さんが私の目を奥まで貫いた。
だから、どうして、第三者の人たちのほうが私達を知っているんだろう。
「影山の記憶に残ってるっていうのは、葉山さんが影山の中でも強く心に残る存在だったからだと思うよ」
そんな彼の記憶に残ることが如何に難しいかなんて、そんなことは私だってわかっている。知っている。ずっとずっと昔から。
返答に困っていると、視界の端に紫と白のジャージの裾が見えた。
「葉山」
視線を少し上にあげると、白布さんがいつも通りの仏頂面で赤葦さんのさらに後ろに立っていた。その声を聞いて、赤葦さんが後ろを振り返る。
「集合の時間だぞ」
「……すみません」
頭を下げると、赤葦さんが白布さんに対して「ゴメン」と言った。
「俺が引き止めてただけだよ。
赤葦さんはそれだけ言うと、梟谷の集合場所に向かうため、私の横を通り過ぎていった。
私は小走りで白布さんの横に行って、また「すみません」と謝った。
「もういいから。まだ来てないヤツらいるし」
気遣いなのかそれとも本当に事実なのかはわからない。
白布さんが背を向けて歩き出したのを、私は黙ってついていった。
＿＿＿＿＿＿＿
稲荷崎、またいつか出てきますよ！
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 809人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：昆布の神
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時：2024年1月12日 2時
