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準々決勝。桐生は見れたが、桐生率いる狢坂は、同じく三大エース“佐久早聖臣”を擁する井闥山に惜敗した。
だが、全体的にとてもハイレベルな試合だったため興奮が抑えられない。
余韻に浸っていると、「Aちゃん」と私を呼ぶ声が聞こえた。
「さっきぶりやんな〜。お疲れ様」
「アッ……宮治さん」
「え？ 治、フルネームで呼ばれてんの？」
ミーティング後か、ユニフォームからジャージに着替えた宮治さんと、その隣には稲荷崎の10番＿＿＿角名倫太郎がいた。
待って。強豪校の有名な選手に囲まれている今のこの状況、幸せすぎでは？
「えーっと、初めまして？ で、いいのかな。稲荷崎の角名です」
「ぞっ、存じ上げております」
少しばかり緊張して、声が上擦ってしまった。
「角名にはそんな顔すんのに、ツムには『くそやろう』やもんなあ。あー、ホンマウケたわ。アレ」
「そ、それは……」
「誰が『くそやろう』やねん」
「げっ……」
「再会して早々『げっ』は酷いやろ！ 俺、一応アンタより年上！！」
「違います違います、そんなつもりでは……！ ちょっと熱が冷めてなくて言葉が選べないだけで」
「Aちゃんはツムなんかより、角名とか俺のほうが好きやって」
「言ってません……！」
必死に弁明していると、宮侑が私を見た。
それは、初対面のときのような鋭い目つきではなく、心做しか雰囲気も含めて柔らかくなったように見える。
「……アンタ、身内に対して容赦ない奴やったんやな」
「え」
「あんな、お前ならできるやろって雰囲気出して脅迫して、セッターを立て直してくるなんて思わんかったわ」
そんなつもりは、一切、ない。
……もしかして私、白布さんに対して結構失礼なことした？
冷や汗を流して呆然としていると、「……楽しい試合はできたから」と宮侑が笑った。
「それに免じて『くそやろう』発言は許したるわ」
「よう言うわ。試合後に『白鳥沢めちゃくちゃ強かったなあ！』とか言ってたの誰やねん」
「勝ったら賞賛、負けたら罵声がポリシーのくせにね」
「うるさいうるさい！ ……まぁなんや、試合前は悪かったってことで」
「あ、それはこちらこそすみませんでした……」
初対面なのに『くそやろう』は流石に酷かったと反省している。初対面だからとすぐにビビる癖もなんとかしたい。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿
治(ツムのこと喧し豚って紹介しとけばもっとオモロいことになったんかなぁ)
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作者名：昆布の神
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時：2024年1月12日 2時
