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『決まったー! ファイナルセットもいよいよ終盤を迎える最中(さなか)、宮侑がサービスエース!』



熱のこもった実況なのは明らか。無意識に眉間に皺が寄る。


(ここに来て、今日一番の良サーブ……)


最後の最後で盛り返してきた稲荷崎に、白鳥沢は追い込まれていく。ただ、一人を除いては。



白布さんが山形さん(リベロ)をじっと見つめていた。山形さんはその視線に気がつくと、呆れたような顔をした。

……あの人(セッター)は、まだこき使う気だ。セットが終わるまで。強いスパイカーを、嫌というほど全国の舞台に見せつけるまで。






次も宮侑のサーブが来る。

エンドラインから四歩。次はジャンプフローターサーブ。

宮侑のサーブの何が厄介かって、それはご存知の通り“二刀流”。スパイクサーブとジャンフロじゃ、拾い方が違うし、宮侑のボールはスピードもあるので対応するのが難しい。何のサーブが来るのかわかっているのに取れないというのはよくあることだ。


しかし、また仲間から脅迫を仕掛けられた一人なのか、山形さんは今日一番の集中している表情で稲荷崎を見つめていた。



「サッ、コォーイ!!」



腐ってもここは全国。
今日を生き残ればセンターコートは目前。
そして、第三セットも終盤まできたこの状況で、ノッているとかノッていないとかはもはや関係ない。諦めるわけにはいかない。


だから……。



『上げた上げた上げた! リベロ山形、連続得点(ブレイク)は許さない!』

「よっしゃああああ!」

「よく上げた、隼人ーー!!」



控えから今日で最も騒がしい声援が聞こえてくる。
当の私も、いつの間にか手汗をかいていて、文字通り手に汗握る展開だ。



「頑張れ……追いつけ……!」







白布 side



先程のサービスエースが嘘だったかのように綺麗に上がったボールを見て、『当たり前』だと思ってしまった自分が信じられなかった。

この人ならできる。そう思うのは、立派な信頼という名の脅迫だ。


ボールに触れる前、稲荷崎のコートを見ると宮侑と目があった。

すごいな、お前は。セットアップ、サーブ、ブロック、スパイク。何もかもがハイレベルで。
対抗心が無いとかそういうわけではなく、ただ俺には俺の晴らし方があるだけ。

セッターとしてどちらが優れているかはどうでもいい。
お前がスパイカーに対して真摯で献身的なのも知っている。


だから、お互いの自慢のスパイカーで勝負させるだけ。

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作者名:昆布の神 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/  
作成日時:2024年1月12日 2時

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