𓂃 𓈒𓏸74𓏸𓈒 𓂃【*】 ページ28
*
「こういうやつ」
葉山が取り出したのは、大量の昆虫(葉山によると、シオカラトンボ、ヘラクレスオオカブト、ノコギリクワガタ、モルフォチョウ、蚕らしい)のリアルフィギュア。
……。
「うわあああ!!」
「お客様」
「サーセン!」
まあ、いきなりこんなものを見せられたら金田一みたいな反応をするのが普通だ。
「こ、これ弟……七星くんが欲しいとかじゃねえのか?」
「七星にはあげないよ。私用」
「あ、そう……」
中学時代から
あまりにリアルに作られた昆虫のフィギュアに、俺は苦い顔をして目を逸らした。
「相変わらずな趣味してるな……」
「どういう意味。でもモルフォチョウと蚕は可愛いでしょ」
「まあそれはギリいけるけどさぁ……」
「……で? 葉山は何が欲しかったの」
訊ねると、葉山はスマホを取り出して検索し、画像を見せてきた。
「これ。オオスズメバチ。かっこよくない?」
「……うん」
「かっこいいかっこいい」
俺と金田一で適当に褒めてみると、葉山は「でしょ」と上機嫌になった。
表情こそ滅多に変わらないけど、葉山は嬉しくなると頬を赤くするからそれなりに感情はわかりやすい。
___『ねえ、仲直りしなよ。もう次の大会まで時間ないよ……』
「……」
話すことが苦手な葉山なりの、精一杯だったんだろう。
いつしか葉山が喜ぶことなんて無くなっていた。
あのときは自分のことでいっぱいいっぱいで、正直葉山のことなんて全く気にしていなかった。
今、離れてから思い返すと、葉山がいつから俺達の前で笑わなくなったか覚えていない。
何をしたら喜ぶか。そんなこと、中学を卒業して、離れ離れになった今でさえちゃんとわかっているのに。
「……それで、出なくて座り込んでたのか」
「うん。でも、まあもういいかな、今日は。また今度やりに来るよ」
葉山が昆虫のフィギュアを鞄に戻していく。
髪色と同化してしまうからなのか、鞄に括り付けられリボンと化したヘアバンドが目に入った。
___『はい、Aちゃん。俺達からプレゼントだよ〜。13歳おめでとう』
部員を代表して及川さんから渡されたヘアバンドに、その時はじめて葉山は頬を赤く染めた。普段は眠たげな目を大きく開いて、それは嬉しそうに____って言って、あのとき……。
𓂃 𓈒𓏸75𓏸𓈒 𓂃【*】→←𓂃 𓈒𓏸73𓏸𓈒 𓂃【*】
659人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
昆布の神(プロフ) - (名前)さん» お気遣いありがとうございます……! 実は今の時点で7シリーズ続くことが確定しておりまして、コレ完結まで時間かかりすぎだろ問題になっておりまして……。できる範囲で頑張りますね。感染症が流行っているので、そちらも体調にお気をつけて! コメありです! (1月11日 22時) (レス) id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
(名前)(プロフ) - 初めまして!いつも楽しく拝見しております!何だか焦っているように見えてとても心配です💦無理して書かなくても自分のペースで投稿しても良いんですからね!!これからも体調には十分に気をつけて過ごして下さい!これからも応援しています! (1月11日 21時) (レス) @page48 id: 9cd8b18189 (このIDを非表示/違反報告)
昆布の神(プロフ) - Yunaさん» コメありです。更新の準備をしておきますので楽しみにしていてくださいませ……! (1月2日 17時) (レス) id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
Yuna(プロフ) - いつもお話楽しく読ませてもらってます!作者様もお気をつけください!1週間後楽しみにしています。 (1月2日 12時) (レス) @page39 id: 8dc1901234 (このIDを非表示/違反報告)
昆布の神(プロフ) - ミミさん» コメありです。嬉しいコメントありがとうございます! 頑張ります🫶 (12月19日 20時) (レス) id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:昆布の神 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時:2023年12月18日 22時