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ガチャ、って、鍵が開いた。

耳がぴくりと反応して、すぐに裏切られるとわかっているのに、ちょっぴり期待して目を向けた。


外から俺を覗きこんでいたのは、深い青の髪と目をした男。

……ああ、知ってる。


生体実験を取り仕切ってるやつ、こいつだから。

幹部とか、第一人者、ってやつなんだろうな。


まさかこんな時間に体を剥かれるのか?
お願いだから勘弁してくれ。


理性的で冷徹な男の瞳と視線がかち合った。

この男はいつも、どこか疑念を抱きながら仕事している。研究に関する疑念じゃない。

自分が、組織がやっていることに、どこか納得してない。……そんな気がする。俺は傷つけられた側なのに、こんなこと思うなんてバカな話だ。



男が俺に手を伸ばして、また目を閉じたら、体がフワッと浮いた。

モンスターボールにすら入れられずに、抱きかかえられたまま部屋の外に連れ出され、俺はマヌケ(づら)のまま放心状態で男の腕の中にいた。


ひとつの部屋の前まで来ると、男がその部屋を開けた。

見ると、その部屋の中にはオレンジ色の光を放つストーブの前で暖をとっている女がいた。まだ子供だった。


ドアが開いたから、女が顔をこっちに向けた。



どこかぼんやりとした顔だった。
印象に残りにくい、うっすい顔だな、なんて。


でも、その瞳は既視感があった。
どこかで見たことがあるような気がした。


脳裏によぎったのは、ガラスケースに反射した自分の姿___瞳。


……ああ、そうだ。

お前は俺に似ていたんだ。


ほんとは死ぬの、怖いんだな。

それをお前は反抗心で隠しているんだろうけど、
お前は俺と同じだから、俺には筒抜けだ。



「ニューラ。今日からお前のポケモンだ」



少女は、俺に手を伸ばした。

白くて小さかった。
おれにふれたその手は、氷タイプの俺でも冷たいと感じた。


こいつは本当は、こんなところにいるべき人間じゃない。そう思った。

おれはそのとき、生きる意味を見つけた。



この少女を守ろう。

俺と同じ目をした少女。


この少女のために強くなろう。

そして、いつかいっしょに_____。

・→←【第7章】同じ目をした少女



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作者名:昆布の神 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/  
作成日時:2023年1月26日 20時

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