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Aは、コウキをアジトの外まで一人で見送った。

アカギというカリスマ性溢れる偉大なボスを失ったギンガ団にしてみれば、コウキは到底受け入れられるような存在ではない。



「……コウキ、ありがとう」



Aが言うと、コウキは意外そうに目を丸くした。

自分を否定したければギンガ団を止めろ___。そう言ったAの本音は、今置かれている現状からの脱却だけではなく、ギンガ団の存続も含まれているとコウキは思っていた。

コウキがやったことではないとはいえ、アカギを失った上、ハンサムという国際警察にも絡まれているギンガ団の存続は状況的に厳しい。



「コウキのおかげで、ようやくスッキリした」



Aはいつもどこか胸が軋んでいた。

自分が置かれた立場を考えるたび、泣きたくなるくらいに心臓が痛くなるのだ。それはきっと、奥底に眠る幼い自分が、囚われの身であることに泣いていたから。



「……これからは、ちゃんと(・・・・)生きるよ」



そう言ったAは、どこか切なげに眉を下げて笑った。

複雑そうな表情だったが、コウキが見た中では、いちばんいい表情(かお)だった。



「がんばってね。強くなるんだよ。……誰にも負けないくらい」



コウキはもう強い。それはよく知っていること。だが、いずれこの少年はシンオウ地方のポケモンリーグの歴史を、記録を塗り替えることになるだろう。

そんな稀有(けう)な才能を持つコウキには、世界で一番強くなってほしい。



「…………おう!」



コウキは笑った。

小さな世界に囚われていた少女の凍てついた心をとかすきっかけになった、希望と自信を詰め込んだ瞳を持って。



「じゃあな!」



コウキが手を振り、Aに背を向けて走り出す。

その背中に手を振りながら、Aは今後のことを考えた。


ギンガ団の内部について最もよく知っている人物はAだ。ギンガ団を探っていたハンサムも、外部から得た情報のみで、内部まではわからない。

ギンガ団の悪事が片付いた今、Aのスパイ任務は終了した。つまり、国際警察に任務報告をする義務がある。
ギンガ団の今後は、Aの手のひらと言っても過言ではない。



……いや、考えるまでもない。


Aは目を閉じる。


もう随分前から決めていたことだ。
ハンサムが来たことは想定外だったが、大した影響はないだろう。

Aはポケッチを取り出して、国際警察の本部に繋いだ。

・→←【第6章】新たな道



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作者名:昆布の神 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/  
作成日時:2023年1月26日 20時

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