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どうやらチャンピオンも到着したようだ。
アカギ様を目の前で失った幹部二人は呆然としている。無線機も相変わらず繋がらない。
「あの子……コウキに、あっちの世界に行ってもらわないと」
「……本気か?」
「だって、私達が今から行ったって間に合わないし……」
「そんなことを言っているんじゃない」
Aがサターンを見上げた。迷うことなど何もないかのように。
「アカギ様が戻ってこられたとき、……死ぬのはお前かもしれないんだぞ」
さらには、再び世界を壊そうとするかもしれない。
いちばん危険に晒されるのは、Aなのだ。
Aはサターンをじっと見つめたあと、目を逸らして口を開いた。
「……それでも人を守って、助けるのが国際警察の役目だって。……“あの人達”が」
サターンはハッとして思い出した。
かつて、死ぬことを恐れていなかった少女の姿。
誰かを守りたいなんてことは微塵も思っていなかったのだろうが、幼いながらに勇敢だったその姿を。
*
閉ざされたドアの向こうから、ドオンと大きな音が聞こえたのは突然だった。
____何者かがドアを叩いている。
それに気づいたAは、パッと顔を上げた。
大きな音を立てて、ついに破られたドアの向こうからは、ギンガ団の中でもしたっぱポケモンとして流通しているグレッグルが姿を現した。
グレッグルはかくとうタイプ。力技で扉を押し破ることも不可能ではない。
グレッグルはAを見つけると、手錠に蹴りを炸裂させて破壊してしまった。
「……あなたは」
ギンガ団のしたっぱポケモンではない。他のトレーナーのポケモン。
___誰かが、アジトに侵入している?
「良かった……ようやく見つけた」
聞き覚えのある声にAが顔を上げると、そこにはギンガ団の下っ端と姿がそっくりの何者かが息を切らして立っていた。
「……誰?」
Aが訊くと、下っ端に似たその者がマスクをとってその顔を露わにした。
「昨日ぶりだね。ウラヌス___いや、Aくん」
ギンガ団に変装してアジト内に侵入していたのは、ハクタイの森でAに声をかけた国際警察、ハンサムだった。
「すまないが時間がない。君に頼みたいことがある」
Aが何か言いかけたのよりも先にハンサムが口を開いた。
グレッグルを見ると、グレッグルは得意げに鼻を鳴らす。
このグレッグルはハンサムのポケモンだったのだ。
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作者名:昆布の神 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時:2023年1月26日 20時