氷の火山【サターン】【プラチナ】 (ページ21)

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「べつに、最初から国際警察の犬だと思ってたわけじゃない。当たり前だろう？あんな十一の子供が国際警察と繋がっているだなんて誰も思わない。ターニングポイントはそんなところじゃない」

サターンはAに馬乗りになると、空いた手でAの幹部服に触れた。

「お前が国際警察の犬だとわかったから、アカギ様はお前を幹部に押し上げた。最速で幹部になった者、ボスから信頼されていると思われていた者が、計画の土壇場で外される……。それを、国際警察どもに見せつけるために。国際警察が一匹迷い込んだところで、計画に問題は無いと証明するために、お前を上手く利用した」

Aの瞳が揺らぐ。
氷のような瞳が、本当に割れるのではないかと心配になるほどに。

「この幹部服も」

サターンの手が、ミニスカートになっている左側に入り込んで左腿に触れた。他人に触られたことのない場所を、突然冷たい手の体温が触れたので、Aの体はビクリと震えた。

「わざと目立つように、こうなってる」

Aは、五年前のことを思い出した。

たった一人、寒い外気が渦巻く吹雪の中に置いていかれたあの日のこと。
死ぬ思いで、その日任務に来ていたサターンに近づいたこと。

「……もうわかるだろ、A」

本当に可哀想なものを見るような目をして、サターンが言った。

「お前は、国際警察にもギンガ団にも捨て駒にされたんだ」

国際警察に捨て駒にされていたことなど、最初からわかっていた。

しかし、捨て駒にされたあの日、Aに生きる道と存在価値を同時に与えてくれたサターンまでもがAを捨て駒として扱っていたことに対して、自分が想像以上のショックを受けていることにAはビックリしていた。

思えば、Aはサターンがギンガ団からいなくなったとき、自分もギンガ団から抜けると決めていた。

今になってようやく、それは無意識のうちにサターンに自分の存在価値の指針を委ねていたからなのだと気づく。

こんなにもショックなのに涙の一粒すら出てこないのは、もう何年も前に涸れきってしまったからなのか。

手首を掴まれたかと思うと、突然サターンの唇が降りてきた。
唇はすぐに離れたが、初めての感じた唇の感触にAは呆然とした。

が、右手から聞こえた鈍い音で我に返る。

「だから、言ったんだ。A。＿＿＿お前が死ぬまで、私が管理してやると」

Aの右手首には、重い手錠がかけられていた。