氷の火山【サターン】【プラチナ】 (ページ16)

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最近では、本部と連絡を取るのは外でやるようにしている。アジトでは最近サターンの監視の目が厳しすぎるのだ。

人目のない夜、ハクタイの森の茂みに隠れながら本部へのメッセージを送る。
彼女のポケッチには、デジタル文字でこう書かれていた。

【赤い鎖をつかって伝説ポケモンを呼び出そうとしている。赤い鎖の作り方は調査中。】

Aが周囲に撒くものは、常に嘘と真実が入り混じっている。

今だってそうだ。
赤い鎖の作り方など、もうギンガ団は特定している。

感情の神エムリット。
知識の神ユクシー。
意思の神アグノム。

この三体を利用したうえで、さらにアカギが持ち前のIQの高さで赤い鎖を生成しようとしているらしい。
もっとも、その生成技術を既に生み出しているのか否かは不明だが────……。

「君」

送信ボタンを押したところで、身に覚えのない声が聞こえ、Aは反射的に距離を取り腰のモンスターボールに手をかけた。

自分よりも上背(うわぜい)のある男を見上げると、その男はベージュのコートに着崩したシャツと黒いネクタイ。どこのお偉いさんかと思ってしまうような格好だった。

「すまない。驚かせるつもりはなかったんだが……」

物腰柔らかそうな声だった。が、Aは警戒を緩めない。

もしも周辺の警察だとしたら、厄介このうえないからだ。
どのみち、シンオウ地方の在住者だとしたら、ギンガ団として顔を見られるだけで邪魔になる。

「私はハンサム。国際警察の者だ」

そう言ってハンサムがAに見せたのは、紛れもない国際警察特有の警察手帳だった。
Aは国際警察から派遣されたスパイだ。国際警察の警察手帳を見間違えるはずがない。

「君は──……」

「国際警察が何の用？」

ハンサムはAの目を見てハッとした。
Aは、飽くまでギンガ団として振る舞うつもりなのだ。
国際警察のスパイではない。ギンガ団幹部のウラヌスとしてやり過ごそうとしている。

内心Aは焦っていた。国際警察がシンオウ地方に新たに派遣された事実に。

Aだけじゃ負担が大きいと考えただけならまだ良い。

が、もしも国際警察に対してもAが嘘をついていること＿＿＿知っている情報を明け渡していないことがバレている場合、間違いなくAは抹消されるだろう。

国際警察の動きがシンオウ地方で活発になり、Aとの接触が増えれば、ギンガ団にスパイだとバレるのも時間の問題であった。