【第1章】ウラヌス ページ2
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目的のためならば、ときに犠牲だって厭わない。
それが、“大人のやり方”だ。
「ま、待て! やめてくれ……!!」
目に涙をためて手を伸ばすその姿が、昔は痛ましかった。
それなのに今は、そんなこと思わない。
むしろ、みっともなくて滑稽で、少し気を抜いたら笑えてくる気さえする。
「スタートラインが違うって、惨めでしょ?」
元のトレーナーではない私が首根っこを掴んでいるため、じたばたと暴れているニャルマー。
右手にニャルマー。左手には、ニャルマーが入っていたモンスターボール。
「野生よりトレーナーから奪ったポケモンのほうが、育成が楽なんだって。最近は団員の勝負弱さが課題でね。
だから、今までは野生のポケモンをいちいち捕まえてたけど、トレーナーのポケモンを奪っていくことも頑張りましょ〜って……」
発案者は私じゃない。
当然、ボスのアカギだ。
そのアカギの目的すら、何か分かっていない。
それでも、私がギンガ団としてこんなことをするのには理由がある。
「ごめんね。私の目的のために許してね」
そう言うと、涙をためた目が見開かれた。
「っ……その言葉……まさか、幹部のウラ___」
「それは、他人に名乗ってもらうものじゃないの」
左手を離し、元々ニャルマーが入っていたはずのモンスターボールを床に落として足で踏みつけた。
「それに、その名前はコードネームみたいなものだから。____本名は、別にある」
足に力を込めると、ブーツのヒールがモンスターボールを貫通してバキッと鈍い音がした。
モンスターボールさえ壊してしまえば、このニャルマーは誰のものでもなくなる。
腰にある空のモンスターボールを取り出してニャルマーに当てると、そのモンスターボールは面白いほど呆気なくニャルマーを手に入れてしまった。
「私はギンガ団幹部のウラヌス。
それがどういう意味かを考えれば、これ以上に皮肉なことはないだろう。
____
天王星は英語でUranus。
英語の読み方をカタカナで直すと、ユラヌスとかウラヌスとかユアラナスとかいろいろな表記が出てきてしまって何がいいかわからなかったので、とりあえず一番名前としてしっくりきたウラヌスを独断で選びました。
本名はもちろん画面の前のAさんです。
ただ、この名前はわけあってサターン様くらいしかお呼びになりません…。
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作者名:昆布の神 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時:2023年1月26日 20時