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サターンとAが出会ったのは、サターンが十七、Aが十一の頃だった。
年齢差自体は変わらないとはいえ、既に歳頃の年齢だったサターンにとって、Aとは限りなく幼い少女だったのだ。
そもそも、こいつは歳下の女を襲うほど飢えていないどころか、三大欲求が欠けているのだろうなとAは思う。
幹部の中でもサターンは真面目な方だと思う。
その真面目さはAも敵ながら認める。どうせならこんな組織じゃなくて、もっとちゃんとした会社で働けば良いのにと思うほどに。
しかし、彼は真面目で忠実すぎるのだ。
激務に追われては睡眠時間を削って仕事をするし、食事はカロリーメイトで済ませるし、もうひとつの三大欲求なんて
Aも三大欲求に興味はない。
ただ、サターンとはわけが違う。
興味がないだけで、睡眠時間は最低でも六時間はとるし、食事もしっかりしたものを食べる。必要最低限のものをとりあえず摂る……それがAのやり方だった。
「失敗は許さない。それがアカギ様のやり方だ」
言い聞かせるようにサターンが言った。
ギンガ団に入団したばかりの頃は、ほぼAの教育係のような役割もこなしていたサターン。
当初、彼はAに同じ言葉を何度も何度も聞かせていた。
それはおそらく、Aをギンガ団の団員として守るためだ。
しかし、ここ数年でこの言葉の意味が変わってきている。
サターンにとって、既にAは守るべき存在ではない。
「証拠不十分……今回の件は不問にする。
でも、もしも本当にお前がコトブキシティでギンガ団とぶつかった子供に意図して会いに行った場合、お前は間接的に発電所でひとりの団員をクビにさせたことになる。
これが、事実となったとき」
今、サターンにとって、Aとは、
「今度こそお前に
ギンガ団として、邪魔な存在なのだ。
他の誰がAに好意的だったとしても、
サターンは違う。
彼にとってAは、そういう存在だから。
____『失敗は許さない。それがアカギ様のやり方だ』
Aを守るためだったはずの言葉は、
今となっては脅し文句になっている。
お前が不祥事を働いた場合、命があると思うな___サターンはそう言っている。そういう意味で言っている。
しかしそれは、Aにとって怖い話じゃない。
彼女は運命を受け入れる。
そういう人間なのだ。
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作者名:昆布の神 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時:2023年1月26日 20時