氷の火山【サターン】【プラチナ】 (ページ46)

今日:3 hit、昨日:4 hit、合計:3,538 hit

・ページ46

*

何かにつけてギンガ団に盾突き、ことごとく邪魔をしてきたあの子供は、今ではあのシロナに次ぐシンオウ地方のチャンピオンになった。

Aを変えたのはコウキだ。
正義と勇気と希望に満ち溢れたあの少年が、Aに今までとは違う生き方を示した。

“アカギの目的の行く末を見る”。
それがサターンがギンガ団に入った理由だった。

ときにアカギのやろうとしていることに疑念を抱くこともあった。ギンガ団は元からあった小さな組織だ。それを、あの人数の団員を集めて大きな組織にしたアカギのことがサターンは気になった。要するに、己の目的の為、アカギに忠実に従っていたのである。

ギンガ団としてやってきた非人道的な行いは、もう数えられない。
トレーナーからポケモンを奪ったこともあった。殺したこともある。生体実験というものすら行った。

そんな自分では彼女を変えることなど到底できなかったし、そんな自分では彼女に愛を伝えることすら許されなかった。

しかし、あの女は馬鹿だ。

死の恐怖に怯え、涙さえも流したというのに、Aは国際警察に嘘をついてギンガ団を守った。あの行為は、世界に盾突いたも同然だ。

けれど、彼女が守ってくれたから、団員達が帰ってくる場所を作れたのもまた事実だ。

＊

トバリシティに着く頃には、街にもしんしんと雪が降り始めていた。あまりの寒さに、コートのポケットに手を入れて肩を縮こませる。

現在のギンガ団は会社みたいなものだ。出勤があるのなら退勤も当然ある。しかしサターンは、この四年間ずっと本部で寝泊まりしていた。

Aがいつもそうしていたからだ。
夜に抜け出していたこともしばしばあったが、彼女はいつも最終的にはアジトに帰ってきた。

もしもAが帰ってくることがあれば、それがいつどんな時間帯かわからないから、いつ帰ってきてもいいように常駐していようという考えだった。

Aに埋め込んだ発信機はそのままになっている。

発信機を取り出すとしたら手術が必要になるのだが、Aに発信機を埋め込んでいたことがバレたら、ギンガ団はAをスパイだと気づいていながら泳がせていたことも同時に国際警察に知られることになる。

そうなると、一気にギンガ団の立場が危うくなるため、発信機を取り出すにも取り出せなくなったのだ。

が、サターンはAと離れてから一度も彼女の居所を確認したことはない。これはサターンなりのけじめであった。