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「失礼」
サターンが何も言えずにいると、また、あの人の声が聞こえた。ハンサムだ。
ハンサムは二人をそれぞれ
「Aくん、先程 国際警察の本部から通達があった。＿＿＿今、この瞬間をもって国際警察の任を解ずると」
ハンサムがそう言ったとき、Aよりも複雑な色を顔に浮かべたのはサターンだった。
Aが国際警察から切られた。それは、国際警察から居場所を排除されたのと同義のように思えたからだ。
しかしその考えは、次に続いたハンサムの言葉で打ち砕かれる。
「そもそもおかしかったのだ。たった十一の子供を危険な組織に送り込むなど。君の故郷……ジョウト地方のセンターから、責任を持って君の身柄を預かると連絡があった」
ジョウト地方＿＿＿そこが、Aの生まれた土地だった。だから、コウキがポケモントレーナーになるきっかけとなった赤いギャラドスの話も知っていた。
しかしそれは、五年間を過ごしたシンオウ地方とギンガ団から、完全に離れることを意味する。
「でも……」
Aは、このままシンオウに残るつもりでいた。
いきなりジョウト地方と言われても受け入れられない。
それに、両親がいなくなってからずっと国際警察の本部にいたAには、ジョウトでの思い出なんて、無いに等しい。
また、五年前のように独りで見知らぬ土地に放り込まれるようなものだった。
「＿＿＿行ってこい、A」
後ろでサターンが静かに言った。
Aが彼の方を振り向く。
他の誰でもないサターンに言われたことが、Aは少しショックだった。自分はサターンと離れることは寂しいと思うのに、彼は違うのだろうか。
「お前には時間が足りなすぎた。
違う土地でポケモンと世界を見るのが、今のお前にはいちばんいい」
「……でも」
「私はギンガ団を正しいやり方で立て直す」
サターンの手がAの頬に触れたかと思うと、背を屈めて目線を合わせた。彼の親指がAの目尻を撫でる。
「違う世界を見て、ちゃんと大人になって、それでもまだ私に情があったならここに戻ってこい。帰ってこられる場所は、守っていてやる」
『帰ってこられる場所』。
それはAにとって、“居場所はちゃんとある”のだと言われているようだった。
「もしも本当にお前が戻ってきたそのときは、今度こそちゃんと全部伝える。……お互い綺麗な人間になったら、また会おう」
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作者名：昆布の神
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時：2023年1月26日 20時
