氷の火山【サターン】【プラチナ】 (ページ32)

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しかし、結局のところ、Aの居場所など世界のどこにも存在しない。

その事実を突きつけたのは私なのに、死に怯えるAが、数年前、初めて出会ったときの寒さに震えるAと重なって、それがあまりに可哀想に見えた。

無意識のうちだったのか、無表情のまま、大きな瞳から涙を流すAを見て、恐怖に怯えるその体を、抱きしめることができたならと考えた。

しかし、そんなピュアな慰めなど、この世界にはやっていい人間とやってはいけない人間がいる。

Aの人生を本当の地獄に突き落とした私は後者だ。

だから最後の最後まで、卑怯なやり方しかできなかった。

＊

目の前のモニターに映っているのは、テンガン山の頂上、槍の柱。アカギ様が目的を達成する様子を見守っている団員が多くいる。

どうやら、ギンガ団に盾突いているあの子供は本当に頂上まで止めに来たらしい。

『時間を操る神話のポケモン、ディアルガ。……そして、もう一匹。空間を操る神話のポケモン、パルキアよ』

アカギ様が赤い鎖を手にそう言うと、まるで空間に歪みが生じたかのように、ディアルガとパルキアが姿を現した。

『このときを待っていたぞ。ディアルガにパルキアよ。この世界を形作るのは時間と空間の二重螺旋。ならば私は、お前達の持つ能力を私自身の力として、新しいギンガを！宇宙を誕生させる！』

アカギ様は、すべての感情を殺している。
ポケモンをパートナーとも道具とも思わない。自分自身の力とすることこそが全て。

『今の不完全で醜い世界は消えるがいい。一度すべてをリセットする。究極の世界、完全な世界を創るため、“心”といった曖昧で不完全なものなど消えてなくなれ』

すると、先程あの子供が解放したユクシー、アグノム、エムリットがテンガン山を頂上を旋回し始めた。

『……やはりな。知識の神ユクシー、意思の神アグノム、そして感情の神エムリット……。シンオウを守るため哀れなポケモン達が来たか。精神のシンボルとされる湖の三匹が揃ってこそ、時間、空間、どちらか一匹とバランスが保たれる。だがディアルガとパルキアの二匹が同時に現れては、どうすることもできないだろう』

ギンガ団の行く末を見るために、今までやってきたが、今になってアカギ様のやろうとしていることが恐ろしくなってくる。本当に、シンオウ地方を壊すつもりなのだ。