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「及川〜、アンタ彼女にフラれたんだって〜?」
七月のある日、ニヤニヤした顔を抑えられないまま登校し、朝練から帰ってきた及川に言ってやると、及川は「なんで知ってんの!? ってか声デカい!」と慌てふためいた。
「昨日コンビニ行ったら、ジャンプ買いに来てたタケル君とたまたま会ってね。『徹がカノジョと別れて最近ずっとヒマってゆってる』ってさ」
「アァ〜もう!! あの子、飛雄の前でも同じこと言ったんだよ!?」
「影山とタケル君、会ったことあんの? ウケる」
「こないだ、オフのときにたまたま鉢合わせてさ、なんか話を聞いて欲しいって」
及川が不満げに口をとがらせた。
及川徹は天才ではない。足りないものはすべて努力で補ってきた。
しかし天才に何年も道を阻まれ続け、彼は周りもビックリな天才アンチと化している。
「ムカつくから、オレ暇じゃないんだよね〜って言ったら、タケルが『彼女にフラれたから暇だってゆったじゃん!』って! いらんこと言うな!」
「ていうか甥っ子に彼女にフラれたなんて愚痴を漏らすなよ」
「ぐぅ……」
生々しい話を聞かされる甥っ子の身にもなってみろ。
あ、でももしかしたら既に慣れて『へ〜そうなんだ』くらいにしか思わないのかもしれない。
「Aちゃんも作ろうと思えば彼氏の一人や二人できるんじゃないの?」
「いや二人は要らないっす」
それただの浮気〜。
いっけないんだ〜。
……まぁ、冗談はさておき。
「好きじゃない人と付き合ってもね〜。
好きな人が私のこと好きなら良いんだけど」
「……へー? 好きな人いるんだ」
及川がイタズラな笑みを浮かべた。
女子と恋バナで盛り上がれる高三男子って、よく考えたらすごい。褒めてつかわそうと思う。
「いるよー。めっちゃカッコイイ人。
及川よりカッコイイ。性格が」
「俺が性格悪いみたいに言わないでくれる??」
「事実じゃん」
「でも口の悪さは岩ちゃんほどじゃないって」
「岩泉と言えばさ。あのね、及川。
私ずっと気になってることがあって」
「え? ……もしかして、好きな人って岩ちゃん!?」
机に頬杖をついて、
にんまりと笑って及川を見た。
「及川徹が彼女と別れる理由、
『私と岩ちゃん、どっちが大事なの!?』だったりする?」
「はァ!? ねーし!!」
及川がガタンと音を立てて立ち上がった。
こいつ、裏で及川岩泉のコンビが超絶人気なの知らないのか? 自分がモテることは自覚済みなのに?
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hwjIN___(プロフ) - 厳島神社は広島です泣 (2023年2月25日 20時) (レス) @page2 id: a610b7465a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:昆布の神 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時:2023年1月23日 22時