fulfill

あの日の前日（8年前ver.） ページ24

fk side


岩「それだけは頷けない。」

ハッキリと、そう言った照の目は本気だった。


「分かってる。」


勿論、俺はそんな照の意見にじゃあやっぱりなしにします、なんて言うほど薄情でもなくて。


Aが退院してもいんじゃないか？


そんな意見がふわふわと風船のように頭の中に浮かんで来ては、退院したら退院したで彼女の居場所は？拠り所は？なんて疑問の針でプツッと風船に穴を開けて萎ませる。


その風船は日に日に頑丈になり、
穴が開かなくなってきた。

それはAが早くお外で遊びたいとか、
学校に行ってみたい、なんて楽しそうに話すから。


岩「ふっかだって、夜勤もあるし急患が来たら病院にトンボ帰りな事も分かってるでしょ？」


「…でも、」


岩「とにかく。他に宛を探す方がAの為になるだろ？」


「…やだ」


岩「やだって…」


今更Aを見ず知らずの人にぽんと預けるなんて出来なかった。
医者としては失格。

でも、


どうしてもそばに居たかった。


口を開けばふっか先生、ふっか先生、

どんなにみんなが泣き止ましても無理な時も俺が抱っこすれば1発、

何かあれば必ず俺を選んで抱きついてくる、


小さな、Aは、


とっくの昔に俺にとっては家族だった。



舘「ふっかだけの負担じゃ無くなるんじゃないの？」


「…」


舘さんの言葉に冷たさを感じたのは、
俺が感じている後ろめたさを自覚しているからか。

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