ブリュレ (ページ10)

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#１０俺のページ10

「ちょっとこれ」

そう言って声をかけてきたリリーさんは、単独のポスターをこちらへ寄越してきた。

「これ？」

「告知して、インスタ載せるから」

「ああ、はい」

そうして向けられた携帯に向かって見取り図さんの単独の告知をさせてもらう。

なんとなく持ちギャグなんかやったりして、30秒ほどの動画が撮れるとリリーさんはポスターを持ってどこかへ行ってしまった。

深夜0:30

誰もいない暗くなった部屋に帰る。
いつものように携帯をいじりながら着替えを済ませる。

と、あるものが目に止まる。

「リリーさん、はやぁ…」

そこには見取り図さんの単独ポスターを両手に告知をする私の姿が載っていた。
さらに淡白な文面と、いかにもリリーさんらしい冗談交じりのハッシュタグ。

" #俺のかわいい後輩 "
" #イケメン彼氏のいる後輩 "
" #なんでやねん "
" #ちゃんねーもええけどAもええ "

いや、意味分からんわ。

普段あまりハッシュタグなんて並べないリリーさんの乱立するハッシュタグ。

珍しい、と。それだけ。
それだけを疲れた頭で思って、携帯を閉じてベッドに放ると重くなった体をそこへ沈めた。

翌朝、目が覚めるとヒロさんから2件着信。

その後にメッセージ。

" 今日会える？ "

一般職のヒロさんは芸人の私なんかと違ってもっと朝が早い。
だから折り返す事もできず、メッセージを返す。

" ごめん、今日夜まで打ち合わせで遅くなりそう！ "

土下座の絵文字まで付けて送信する。

携帯を一通り確認するとベッドから抜け出して準備をする。
午前は劇場の仕事じゃないので、しばらく外にいてもいいような格好を選ぶ。

こういう時に衣装のラクさを痛感する。

洋服に大して興味が無いので適当にTシャツとデニムを見繕ってよしもとの本社へ向かう。

指定された会議室へ行くと、その部屋には男女が静かに携帯を触って待っていた。