ブリュレ (ページ8)

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#８言わなくていいことページ8

「タクシーで帰ったんちゃうん？」

その言葉で私はハッとした。
言わなくていい事を……

「心配やからタクシー使えって、どういう事？歩いて帰ったん？その、リリーさんと？」

「えーーーっと…」

「ん？」と小首を傾げるヒロさんの目を見るとどんなに嘘をついても見透かされてしまうような気がした。

「…リリーさんが送ってくれるって言ってくれてん。家の近くまでちょっと送ってもらったんよ。でもなんもあらへんし、ちょっといい運動になったかなー…なんて……」

「ごめんな？」と顔色を少し伺うように謝ると深いため息が聞こえてきた。

「なんでそんなことになるん。なんかあってからじゃ遅いねんて。先輩やろうが俺は信用でけへんねん。わかる？」

「…分からなくは無いねんけど、でもなんも無かってんで？」

「そらお前が気付いてないだけかもしれへんやん、分かってないわ」

まだ食事の途中のテーブルを他所に、ヒロさんは強引に私の手を掴んで寝室へと進んでいく。

全てが終わると、満足したのかヒロさんは優しく頭を撫でながら小さく呟いた。

「ごめんな、A」

そう言うヒロさんの先ほどの様子はどこにも無く、ただ私の首元のチクチクする痛みだけがそれを物語っていた。

「心配やってん、好きやから」

ただ私はヒロさんのその一言に絆されてしまった。

「…うん、ごめんなさい、私も……」

結局昨日はそのまま眠ってしまったため、朝劇場へ来る前にバタバタしながら昨日の片付けをする羽目になった。

ヒロさんと別れて、それぞれ仕事へ向かう。

すこし身体が重いものの、特段いつもと変わらなく大楽屋へ入る。

すると出入り口でぬっと現れた大きな影にぶつかり、咄嗟に謝る。

「おっと、あ、なんやAやん」

その声のする方を見上げると、盛山さんだった。

「なんや盛山さんか」

「なんやってなんやねん！」

そんないつもと変わらないツッコミを軽く交わし、楽屋へ入ろうとすると、

「あ？なんやそれ」