ブリュレ (ページ11)

今日:8 hit、昨日:1 hit、合計:27,033 hit

#１１自惚れページ11

「すんません、遅くなりました」

その声でパッと顔を上げたのは私の相方・樋口とリリーさん。

「おはよう～」

「ええよ、まだ時間やないし。モリシも来てないし」

そう言って再び手元に視線を落とすリリーさん。

「なんや、そんな急がんでも良かったやん」

そう漏らすと、樋口に咎められた。

「そこはちゃんと急いでや。なんなん、眉毛描いただけ？」

「そや？」

素直に認めると、もっと身だしなみくらいちゃんとしいや！先輩と仕事なんやから。と、正論をぶつけられてしまった。

「ねぇ？リリーさん！そんなやとヒロさんに愛想尽かされてまうで！」

「あぁ～それはつらい！」

「イケメンに愛想尽かされたらこっち来たらええやん、ほらイケメンが待っとるで」

少し顔を上げて自身を指差し、そう言い放つボケを何となくやり過ごしていると、そのうちに盛山さんがやってきた。

「マジで結構直前になってもうてごめんな」

と、言うのも私たちが見取り図さんの単独に呼ばれたのだ。

しかも今日は本番2週間前。

どんな経緯でこの土壇場オファーになったかは分からないが、とにかく単独をやるからには、出るからにはせっかくなのでコラボネタを作らねば、と今日集まったのだ。

コントでのネタ作りが始まる。

普段、全くコントをやらない私たちはとにかくアイデアを出していく。それを見取り図さんがネタにしていく、と。なんともコラボネタらしい共作だ。

しばらくは単独の準備を最優先での日々が続いた。
もちろん、ヒロさんにも会えてない。

それでも、分かってくれていると思ってた。

私の仕事に対する向き合い方、ヒロさんへの想い。

ヒロさんは理解のある恋人だと、思っていたから信頼していたし、信頼していたから俯瞰で見れなくなっていた。

「あ、もしもし、ヒロさん？」

『おう、おつかれ』

「お疲れ様。遅くなってごめんなぁ、LINE見たで。見取り図さんの単独、来てくれるん？」

『うん、行こかなて思って。』

ヒロさんからそんな連絡が来たのは本番１週間前。
どうにか１枚チケットを確保して、ヒロさんに電話を入れる。

「嬉しいわ！今めちゃくちゃ準備してんねん、楽しんでもらえると思うから！がんばるわ」

これが終わればまたこれまでのように戻れる、と自らを鼓舞し電話を切る。

単独まで、１週間。