ブリュレ (ページ1)

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#１相変わらずページ1

「A」

少し低い声が私を呼ぶ。
その声に応えるように、ゆっくり半身を起こすと優しく彼に口づける。

「愛してる」

その言葉に安心し意識を手放して深い眠りについた。

「おはようございますー」

劇場の大部屋に入ると、すでに大勢の芸人がそこでネタの確認やメイクなど準備に入っていた。

部屋の奥でこちらに手を振る相方を見つけると、そちらへ向かう。

「樋口おはようー」

「Aおはよう！あれ、今日なんかリップの色違くない？なによ、色気づいてんの？(笑)」

女コンビという事もあって目敏い相方はいつもと違うメイクにすぐに気付いて茶化す。

「違うよ、今日はヒロさんが観に来るの！」

「それでか～！気合入ってんなって思った(笑)かわいいとこあんじゃん」

「やめてよ～」なんて女子高のようなノリで戯れていると向こうからこういう話題に敏感な先輩がやってきた。

「なになに？今日誰が来んの？」

「あ、リリーさん、見てこれぇ！今日この人彼氏来るから色気付いちゃってるんですよ(笑)」

するとリリーさんは意外そうにこちらを見る。

「へぇ～Aって彼氏いたんやぁ、え、どれくらいやってんの？」

普通の顔してこういうことを聞いてくる先輩ほど厄介であたおかなもんはいない。

「そういうこと聞きます？普通」

わざと渋い顔をしてそう返すと、悪びれもせず能天気な返事が返ってきた。

「え～だって気になるやんなあ、男ってそういうもんやん」

「いや知らんけど！言いませんからね(笑)」

「なんや、おもんないな～また今度聞くわ」

リリーさんはそういうと、どこかへ行ってしまった。

あの人あんなんやから彼女出来へんのちゃうかな…なんだかそんな気さえしてきた。

いや別に、想いを寄せてるわけちゃうからどうでもええんやけど。

「リリーさんも相変わらずやな～この前新しく入った劇場のスタッフの子にも聞いとったで？(笑)」

「なにを？」

「経験人数」

どこまでなんだ…と呆れてため息をつくと樋口はもはや諦めたように「あの人じゃないと許されへんな」と笑った。