第百四十四話 ページ3
「家族を紹介しよう。そっちに座ってるのは私の妻のモノアだ。こっちの若いのは弟の……」
「オソマ行ってくる！！」
突然のことで思わず肩が跳ねてしまった。アシリパさんはエクロクの話を遮り、突然立ち上がって大きな声を上げた。その様子に流石に杉元さんも顔を青くした。
「ちょっと…アシリパさん！我慢できないのか？」
「もうオソマが出口まで来てる！！」
「んまぁ〜！下品ッ」
アシリパさんが外に出て行ってしまった後、少しいたたまれなくなり、思わず頭を下げる。
「す、すみません…その、私たちも彼女のこんな様子は珍しくて…」
「ほかの家ではこういった場で挨拶の邪魔なんてしなかったし、頭の鉢巻とかも取ってちゃんとしてたのに…どうしたんだろうな」
「…………気にしてない。子供のやることだから」
幸いエクロクは怒っていないようで、少し安心する。すると若い男の肩を叩くと、「うちの便所はわかりにくい場所にある。迷ってないかちょっと見てこい」といい、彼をアシリパさんの元へと向かわせた。口を挟む隙ができ、尾形が口だけで笑顔を作っていた。
「ムシオンカミってどういう意味だ？」
正直私たちも彼女がなんて言ったのか気になっていたところだ。しかし彼らは一向に答えようとしない。
「おや？もしかして分らんのか？」
尾形から圧のかかった視線が彼らに向けられる。こちらに向けられていないとはいえ、その恐ろしさには思わず息をのむ。
「お、尾形…」
「ムシオンカミはちょっと聞いたことがない。さっきの娘はこの辺のコタンの子か？アイヌ語にも方言がある」
思わず彼を止めようと口を開くも、エクロク自身が弁明をする。その返答に杉元さんも頷いていた。
「うんうん確かに！ギョウジャニンニクだけでも『プクサ』とか『フラルイキナ』とか違う呼び方があるらしいからね。一体何を疑ってるんだ尾形！この人達に失礼なマネはゆるさんぞ！」
杉元さんにとうとう怒られるも、彼は笑顔を崩さない。
「こいつら本当にアイヌか？」
「尾形…あんたどうしてそんなに疑っているんだ？何か引っかかることでもあったのか？」
子熊の檻の話は彼は知っているのだろうか？実際に経験した私たちなら違和感を持つ理由は十分あるのだが、どうして彼がここまで疑っているのか理解できない。
「あったもなにも、この村はおかしい事だらけじゃないか？」
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ほほいほい(プロフ) - 烏羽さん» ありがとうございます。コメントを頂いたのが初めてなので嬉しい限りです。これからも応援していただけますよう精進いたしますので、どうかよろしくお願いいたします…！ (2021年9月26日 21時) (
レス) id: a999479a6f (このIDを非表示/違反報告)
烏羽(プロフ) - 思わず一気読みしてしまうぐらい最高でした！応援してます！ (2021年9月26日 19時) (レス) id: 9dd84298a0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ほほいほい | 作成日時：2021年9月22日 23時
