第四十三話 ページ45
私たちが奴に近づいてから数秒、奴の配置した飯盒をアシリパさんが弓で崩し、それと同時に奴が銃を撃った。その隙に杉元さんは奴に近づき、私は近くの木で待機する。
「銃をこっちに投げろ」
「…フン。どうりでなかなか狼が出て来なかったわけだ。そんなに殺気を撒き散らかされては木化けも無意味だな。ケチな物取りじゃなさそうだな？」
「こいつで間違いないはないか？」
杉元さんが叫ぶと、彼よりも後ろの木陰で待機していた白石が頷く。
「間違いねぇ。そいつが二瓶鉄造だ！！」
「…あれは白石か？なるほど。目当ては俺の体の入れ墨か」
「その単発銃…離さんつもりか？弾薬盒からタマを取り出しボルトを引いて装填するあいだに、俺は五発すべておまえにブチ込める」
「勝負するかね？どちらがこの山で生き残るか」
「俺は不死身だぜ」
すると突然背後から足音が鳴る。小さいその影はあっという間に私を通り過ぎて、杉元さんの銃に齧り付いた。
「でかしたぞ駄犬」
杉元さんの銃が犬に奪われた隙に、二瓶が中華包丁のようなものを振り下ろす。
「そんな技で杉元さんが殺されると思ったかッ」
すぐさま飛び出し彼らの間に入り、奴の刃を刀で受け止めると、杉元さんは腰に差した短剣を取り出し、刃を持つ二瓶の指を切り落とす。私の後ろから奴の心臓を目掛けて短剣を突き刺すが、それは奴の腕で阻止される。その隙に私は腹を突き刺され、空気を吐きながらくずおれる。そして一気に銃を振り下ろし、杉元さんの頭に直撃した。
「獣の糞になる覚悟は出来ているんだろうな？」
今度は銃を横に振り、それを彼が避けて刃を拾う。
「白石ッ！！なにやってる早く銃を拾えッ」
「そいつをよこすんだ！！」
白石は犬から銃を取り戻そうと奮闘するが、中々動こうとしない。その隙に奴の左足を短刀で刺そうとするが、それも見通されてしまい、顔を蹴られてしまう。杉元さんが奴の腕から短剣を抜き取ってる間に、白石は犬に頭を噛まれていた。
「いだだだだっ」
「帰れ白石ッ」
「このワン公！」
犬の首輪を掴み、彼は犬を崖下に投げる。鳴き声が聞こえるので死んではいないのだろう。すぐさま銃を奪い、白石は二瓶にそれを向けた。
「大人しくしやがれ二瓶鉄造！！」
「お前らこそ武器を捨てろ」
低い声が聞こえる。二瓶とは別の声だ。目線を上げると、あの体格のいい兵士がアシリパさんを人質に取っていた。
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作者名：ほほいほい | 作成日時：2021年8月26日 23時
