第四十二話 ページ44
昔、猟師を殺して獲物を横取りする輩がいて、彼女と父親もそいつらに狙われたことがある。熊の尻に特徴的な傷をつけその場を逃げたのだが、後に毛皮商人の元へ同じ傷を持つ毛皮を持ち込んだ男がいた。そいつの仲間は三人いて、まだ山に潜伏して次を探していた。
だがその三人は、二瓶鉄造を狙ってしまったのだ。
「それでその三人を殺して網走へ…ってことですか。」
「その二瓶ってのはどんな奴だ？容姿は？」
「毛皮商が数週間前に見た時は茶色のアイヌ犬を連れていて、18年式の単発銃を持っていた。髪は白髪混じりで初老の男さ。」
杉元さんとアシリパさんと目が合う。思わず汗が流れた。
「アシリパさん、杉元さん、もしかしたら昼間に見たあの男かもしれません…！」
「そうだ！それともうひとつ…『もし白い狼の毛皮が手に入ったらいくらで買う？』……と毛皮商に聞いていたらしいぜ」
ドク…と心臓の音が速くなる。通りで奴らは私たちの足跡に全く反応しなかった。何故なら目的は私たちではない。レタラだ！奴らはレタラを狩ろうとしているんだ！
「何でそれを早く言わない！！」
「そうだぞ白石、てめーは「フプチャの刑」だ。噛めオラ！！」
「ええ？屋根じゃんそれ」
「水はなしだぞ！」
杉元さんがフプチャを白石さんの口に突っ込むと、あまりの苦さに彼は悲鳴をあげていた。
「アシリパさん朝を待とう。しっかり休まないと。レタラが心配なのはわかるけど」
焦るアシリパさんを杉元さんが優しい顔で眺める。だが彼自身の顔にも説得力があるのだろうか。
「…杉元さんあんた、笑ってるじゃないか。」
誰にも聞こえないその声は、ただ暗闇へと吸い込まれて行った。
***
夜が明けた。戦う準備をし、小屋を出る。白石はと言うと自身が戦力にならないことは分かりきっていたため、何故自分がいかなきゃいけないのか不満に思っていた。
「何で俺も一緒に行かなきゃなんねーの？」
「二瓶鉄造を確認できるのはお前だけだろ」
「よし、出ましょう。囚人を捕まえてレタラを守りに！」
奴らを探し雪道を歩く。すると突然一本の狼煙が空に上がった。
「昨日私たちが鹿を獲ったあたりだ」
そこへ向かうと、林の奥に銃を構える男を見つける。だが私たちから見て後ろを向いているので、顔が確認できず二瓶本人とはl確認ができない。
「アシリパさんはここから弓矢で援護してくれ。俺たちはもう少し近寄ってみる」
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作者名：ほほいほい | 作成日時：2021年8月26日 23時
