第三十話 ページ32
外が騒がしい中、混乱に乗じて建物の中を走り回る。盗み出した隊服を身に纏い、私たちはあの男が所持している刺青人皮を探す。やはり外には簡単に出したくないようだ。燃え盛る炎の中、どれだけ探しても見つからない。
「もう火がかなり広がり始めてる。もう外に出ないと助からない！」
外に向かって走り始めると、白石は私の刀を見つめている。
「縄解いてる時に思ったんだけどよ、お前よくそんな小さな体で刀振り回してるよな」
「これでも女子の中では力がある方だぞ。ずっと稽古してきたからな。」
「へぇ〜
……
え！？“女子”ぃ！？」
「全く、黙ったと思ったら急に叫ぶし、忙しい奴だな。
もう火の手がそこまできてる。いい加減出るぞ」
外に出ると、あの男が顔を青くした兵士と会話しているのを見つける。こっそり近づいて会話を盗み聞きすると、刺青人皮について話していることだわかる。
「鶴見中尉殿、申し訳ありません。火の回りが早くて…中尉殿の刺青人皮を持ち出せませんでした。」
「それは無事だ」
鶴見が上着を脱ぐと、奴の体には入れ墨が…いや、刺青人皮を直接着ていたのだ。
「おかげで暑いわ。あついあつい」
二人係で探しても見つからない訳だ。隙を見て二人で抜け出す。アシリパさんと杉元さんの元へ向かうためだ。
***
膝の裏がヒリヒリする。戻ってきたや否や、アシリパさんが私を見つけた途端、あの変な棒もといストゥで膝の裏を思いっきり叩かれたのだ。それだけ私たちが勝手にいなくなってしまったことに怒っていたのだろう。
今の問題は、この杉元さんが連れてきた馬だ。
「さて…この馬どうするね？」
「え？どうするねって…この馬は軍が使ってたものだし、売ったらアシがつくかもしれん。置いていくには惜しいし。」
杉元さんが馬を撫でると、馬は頬を杉元さんに擦る。
「随分と杉元さんに懐いていますね。」
「いやいや連れていくには目立つ。今後どんな落とし穴があるかわからねぇ。ケチケチしないで証拠隠滅に処分したほうがいい。」
「レタラにもご褒美をあげたい。」
どうやらあの狼もこの作戦に協力してくれたらしく、彼女のそばであくびをしている。
「決まりだな」
白石さんが銃を構える横で、杉元さんは愛馬(になる予定だったかもしれない馬)への別れを惜しみ、悲しそうな顔をするのであった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 116人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ほほいほい | 作成日時：2021年8月26日 23時
