野上さんは天使ですか？6 (ページ14)

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兄の部屋ページ14

あたしの部屋で本を見てた2人に声を掛けて、隣の扉の前に立つ
「ねぇ…なんで翔さんの曲あるって思ったの？コレが書かれたのは高3の卒業式の日。翔さんが亡くなったのはAちゃんのデビュー前でしょ？」
『…さぷらいず、すきなのは、あにゆずり。あたしが、しょーなら…しゅんくんが、くれたちゃんす、しかけない、はずがない。すくなくとも…でもきょく、くらいはある、とおもう』
あの日翔が音源的な何かを持ってたか見てないから分からないけど、あたしなら音源を何らかの形で持って行く…もし音源なくても譜面ならあるはず。翔の性格上、原本は持ち歩かない。あの日持ってたとしてもコピーだ

この部屋に入るのが怖くない訳じゃない。でも確かめる以外の目的も出来た。あたしの後ろには心強い従弟と幼馴染。隣には支えてくれて今も手を繋いで勇気をくれる最愛の人。大丈夫、前に進める

まだここに住んでた頃と同じようにドアをノックする
『しょーちゃん、はいるよ』
━A？いいよ〜━
頭の中で当時の翔の声が聞こえ、ゆっくり扉を開ける。中に入るとあの頃と色々変わってる部屋の中。目に付くとこに飾られた、高校の入学式で撮った2人の写真だけは変わらない
「…Aちゃんの今の部屋に家具の配置似てる」
土岐「確かに」
八代「流石双子」
『そう？』
「ほら、窓際のチェストとk…あ」
翔君の声に窓際に置かれたチェストを見ると上には灰皿と、一緒に吸ったことの無い見慣れた銘柄の煙草。お互いの前で吸ったことなかったのに、同じのを吸っていた兄に笑みと涙が溢れた
「双子のシンクロニシティ…」
土岐「ホントに一卵性みたいだよね」
『やっぱ、かんがえること、いっしょだ』

部屋の棚には翔が好きだったジャズのCDと一緒にあたしが出た舞台のDVDとフライヤーが飾られていた
『なんで…』
土岐「翔君に頼まれて俺が送ってたんだよ」
翔君が1枚手に取ると貼られた付箋に翔の字が見えた
「感想かな…「デビュー作。震える声から緊張が伝わった」って」
『ばれてる…』
思わず零れる苦笑い。本当、翔には隠せない
土岐「俺気が付かなかった」
八代「それ何役だったけ」
『じょし、ちゅうがくせい…だったかな』
「神前柚月葉(ｶﾝｻﾞｷﾕｽﾞﾊ)主人公の男性教諭に恋した中学生」
『くわしい』
「土岐さんに借りて全部見たし俺コレのAちゃんが告白する台詞好き」
『おぼえてない』
「震えた声で謝りながら、もう少し好きでいさせてって言うの好き」
『あー…おもいだした』