野上さんは天使ですか？13 (ページ42)

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ただいまページ42

真っ暗なリビングに入るとヘッドフォンしてパソコンと睨めっこしてる彼女の背中。カタカタと指が忙しなく動いて居てそっと覗いて見れば居酒屋用のレシピ纏めてるらしく、そのヘッドフォンからは俺の歌ったキャラソンが音漏れして聞こえていた
そのまま後ろからギュッと腕の中に閉じ込めると面白いくらいに肩が跳ね上がりヘッドフォンが落ちた
「ただいま」
『びっ…くりした…おかえり』
ぽんぽんっと軽く頭を撫でられ、その肩にグリグリ額を押し付ける。あー…丸一日振り。シャンプーがいい香り…

「はい、頼まれてたやつ」
倉敷は行ったことがないからと頼まれた地酒とワイン。俺のチョイスでいいってなんとも難しい事を言われたけど、呑めない酒は無い彼女に選ぶのは少し楽しかった
『やった〜…治ったら翔君と一緒に呑も』
「あと…これお土産」
鞄の中から細長い箱を取り出して差し出すと、Aちゃんの目が丸くなった
『…開けていい？』
「もちろん。ゴメンね、俺和装詳しくないからなんとなくで選んだんだけど…」
箱の中には、真田紐の帯締め。服ほど詳しくないけど、和装大好きな彼女が所有してる和服の中で…1番使用頻度が高い帯に合わせやすい物で以前プレゼントした帯留めに合うものを選んだつもり
『わぁ…素敵っ』
嬉しそうに笑うAちゃんに、買おうかどうしようか悩んで…どれにしようか悩んで…やっぱり正解だったみたい。だって彼女がこんなにも嬉しそうに笑ってくれるんだもん
「俺、Aちゃんが和装してんのすげぇ好き」
翔也さんとラジオ録った後、日傘を挿して藍色の着物を着てナイトを連れ…ピンっと綺麗な姿勢で歩く彼女が雑誌やテレビで見る女優さんやモデルさんよりも輝いていて…見慣れたスタジオ前の道路がまるでランウェイのようだった
『そ、う…なの？』
「うん。浴衣も着物もすげぇ好き」
『知らなかった…』
ちょっと照れくさそうに笑ってるAちゃんがメインを務める番組のイベントで夏は必ず浴衣だから。今年も彼女の浴衣姿を見られるなぁと少し嬉しくなった
「今年はどんな浴衣着るの？」
『ん〜…翔君があたしに暖色似合わない事ないって教えてくれたし…今年は挑戦してみようかな…』
「楽しみだな〜…」
あの日の俺は想像出来るだろうか…Aちゃんが俺との未来を選んで、お揃いの指輪を左薬指にして…妻として俺一緒に居てくれること…子供を欲しいと思ってくれたこと

彼女と過ごす幸せ過ぎるほど幸せなこの日々を