遠征 ページ41
怪我してから何回もこのやり取りしたけど…今日は更に念を押されてる。まぁ仕方ないけど
「絶対無理しちゃダメだよ」
『約束したもん、絶対しないよ』
「…すげぇ心配」
『アレ？そんな信用ない？』
「Aちゃん無意識に無理するじゃん」
彼はこれから仕事のため岡山県へ行く。彼が仕事で居ないことは多々あったけど、今はあたしが捻挫してるから凄く心配されてる
「あー…マジで心配」
『大丈夫。今日は�盧笋気鵑皸貊錣世掘�
「…専務にLINEしとこ」
『翔君は何の心配もしないでお仕事集中して下さい』
玄関に座って靴を履く彼の首からシルバーのボックスチェーンに通しておいた御守りのピンキーリングをそっと下げそのまま背中に抱きつく
「…これ、Aちゃんの」
『うん。御守り。コレを持って翔君が帰って来るのをいい子で待ってるから』
「…Aちゃんは松葉杖で歩く方に集中すると、水分補給も忘れて歩こうとするから…今日こっちめちゃめちゃ暑くなるって天気予報で言ってたし、しっかり水分と塩分取ってね。俺が向こう行ってる間に熱中症で倒れたとか言われたら、仕事集中出来ないし」
スっと伸びて来た翔君の手がスルスルあたしの頭を撫でる。ライブ前ほど冷たくないな…
『送ってあげられなくてゴメンね』
「俺がいいって言ったんだからいいの」
ふふっと笑う彼の声が聞こえ腕に少しだけ力が入る。大丈夫、大分と岩手間の半分くらいしか無い…近い近い…
「…寂しい？」
『さみしく、ないもん…』
「あれ珍しい」
『…だって翔君はここに絶対帰って来るんでしょ』
「うん、当たり前でしょ」
『だから寂しくない』
上ドラの時いつも翔君に見送って貰うことが多かったから気が付かなかったけど…こんなにも寂しいんだ…大分より近いけど、群馬より遠いもん…
「Aちゃんの口は素直じゃないな〜w」
笑いながら翔君はあたしの腕に手を乗せコテンっと首を傾げた。そういえばMSNのイベントで徳ちゃんにやってたな
「飛行機だとたった1時間ちょっと。電車だと4時間くらいしか離れてない。ほら、大分より近いよ」
『…群馬より遠い』
ボソッっと呟けばまた彼はクスクスと笑った。あー…また笑顔でお見送り出来なかった。コレじゃ翔君を困らせちゃう
『…ごめん』
腕の中から翔君を離すと立ち上がったった彼に手を引かれた
「寂しがり屋の奥さんの為にちゃんと帰ってくるから、いい子で待っててね」
チュッと言う可愛いリップ音と笑顔を残して、彼は仕事の為に倉敷へと出掛けて行った…
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作者名：福招猫 | 作成日時：2022年4月29日 8時
