小悪魔ちゃんと赤髪くん。 (ページ9)

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7. 意外なご主人野郎ページ9

『は？』

「やっほ〜。おつかれ。相変わらず楽しそうじゃん」

同僚たちが何事？とざわざわし始める。

まってくれ。

私は全身の血がなくなるんじゃないかというくらい焦っていた。

とりあえずこの場をどうにかしなければと、私はロボットみたいな動きで彼の元へ向かった。

『ご主人様は特別指名でしたので、こちらの個室でご案内いたしますね♡』

「そんなのしてないんだけど」

『いいから来て』

彼の右腕に親指が食い込むほど握って、小声で囁く。

さっきのおじさんに囁いたとかより多分3オクターブは低い声だ。

「えっ！特別指名？！そんなのあるの？！ゆかりちゃん？！」

『ごめんね、ちょっとまっててね！』

おじさんごめん。

・

『入って』

VIPルームにぶち込んで、椅子をガラガラ引いて座る。

「ガサツなメイド様だね」

『…』

座って、と彼にソファに座るよう促す。

彼は軽蔑なのかなんなのかわからない目線を私に向けて動かなかった。

「そっちがソファ座れば？」

『いいから早くしてよ、仕事中なんだから』

赤髪のどっかり足を組んだ青年と、肘をついたやたら態度の悪いメイドが向かい合う。

こんな構図はどこの漫画を探してもないと思う。

『もう来ないって言ったよね』

「突然来たのはそっちもでしょ？」

『その話じゃない。わかるでしょ』

「大事な大事なお兄様が知ったらどうなることかねえ」

目の前の赤髪をぶん殴りたい衝動でいっぱいになった。

絶対負けるけど、剣道なら勝つ自信あるかな。やってたし。

なんて考えなくていいことばっかり考えて、私は首を横にぶんぶん振った。

『いいからお願い、早く帰って、君がいたら集中できない』

裏口から通してあげるから、と付け加える。

「浅野さんさあ」

『何』

「学校では小悪魔キャラやんないの？」

『もういいから……！』

イライラが限界に達した私はばっと立ち上がって、ドアを指差した。

『用がないなら、帰ってください。お金落とさないご主人様にメイドは仕えません』